研究概要 |
アセチルコリン合成の律速段階となるコリン輸送を担う高親和性トランスポーターCHT1はアセチルコリン合成の制御に重要である。ラット脳シナプトソーム画分におけるCHT1のリサイクリングを解析した結果、細胞外の基質存在下でCHT1のエンドサイトーシスが促進されるとともに、阻害剤であるHC-3によってエンドサイトーシスが阻害されることを明らかにした。CHT1に直接作用する化合物としてニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストであるテトラヒドロピリミジン系薬モランテル・ピランテル・オキサンテルを以前に見出していたが、これらはラット脳シナプトソーム画分におけるCHT1を競合的に阻害し、その結果としてアセチルコリン合成を抑制することを明らかにした。また、CHT1のホモオリゴマー化について詳細な検討を行い、CHT1を発現させた培養細胞に対する親水性化学架橋剤の処理により高分子量のCHT1が観察されること、異なるタグを付加させたCHT1を共発現させた細胞から調製した溶解液を用いた免疫沈降により複合体が検出されること、架橋後の免疫沈降においても高分子量のCHT1が検出されること、不活型変異体I89Aと野生体の共発現時にCHT1のコリン輸送活性においてドミナント・ネガティブ効果が観察されることなどから、CHT1が形質膜においてホモオリゴマーを形成することを明らかにした(Okuda et al., J. Biol. Chem., 2012)。
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