研究課題/領域番号 |
23790101
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
岡 沙織 帝京大学, 薬学部, 講師 (80439562)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リゾホスファチジルイノシトール / GPR55 / カンナビノイド |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでの研究で、新規カンナビノイド受容体として報告されたGタンパク質共役型のオーファン受容体GPR55の内在性リガンドが、リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)であることを明らかにした。LPIに対する受容体の同定は研究代表者の報告が初めてである。マリファナの主要活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)などのカンナビノイドが持つ多彩な作用のうちの幾つかはGPR55を介している可能性が高いが、詳細は不明である。ところで、LPIは代謝回転の早い不安定な化合物である。そのため、刺激に応じて速やかに産生され、代謝されると考えられるが、具体的なことは分かっていない。研究代表者が本研究で確立したLC-MS/MSの測定系を用いて様々な系におけるLPIの産生を調べたところ、マウス血中には相当量のLPIが存在し、さらに、血漿を加温することにより2-アラキドノイルLPIが選択的に産生されることを見いだした。このことは、加温血漿におけるLPIの産生にはホスホリパーゼA1が関与していることを示すものである。また、体内でLPI、特に2-アラキドノイルLPIの産生と分解又は取り込みが常に起こっていることも示唆される。 GPR55に対しては2-アラキドノイルLPIが最も強い活性を示すことから、2-アラキドノイルLPIが選択的に代謝回転していることは大変興味深い。H26年度は育児休業により研究中断していたため、研究は進んでいないが、研究再開後はこの点を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度は、育児休業により年度を通して研究を中断していたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究再開後は、LPIの産生についてさらに詳しく調べ、GPR55とその内在性リガンドであるLPIの生理的意義を調べる。種々の培養細胞や、動物細胞から調整した血小板、リンパ球などをリポポリサッカライドやTNF-α等で刺激したときにLPIが産生されるかどうかをLC-MS/MSを用いて調べる。LPIは、ホスファチジルイノシトール(PI)からホスホリパーゼA1又はA2によって産生されると考えられるが、詳しいことは分かっていない。どのタイプのホスホリパーゼA1又はA2によりLPIが産生されるのかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後の休暇および育児休業による研究中断のため
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次年度使用額の使用計画 |
研究再開後は、LPIの産生についてさらに詳しく調べ、GPR55とその内在性リガンドであるLPIの生理的意義を明らかにする。繰り越した経費は、脂質の分析に必要なガラス器具・有機溶媒・HPLCカラム、トレーサー実験のためのラジオアイソトープ、近交系マウスなど、全て消耗品の購入に充てたいと考えている。
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