研究課題/領域番号 |
23790103
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
藤井 幹雄 東邦大学, 薬学部, 講師 (20311996)
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キーワード | グルタチオンリダクターゼ / 酵素分類 / 阻害剤 |
研究概要 |
平成24年度は、23年度に作成した阻害剤を一般的なアルコール脱水素酵素以外に、創薬ターゲットと考えられるアルドースリダクターゼやグルタチオンリダクターゼに対し、検討を行った。その結果、アルドースリダクターゼはNADP依存酵素であるため、我々のNAD型の阻害剤はほとんど効果がなかった。しかしながら、グルタチオンリダクターゼには強い阻害作用を示した。この作用機序はユニークでFADとNADP結合部位の2か所に我々の阻害剤が作用するということが確認できた。また、FADは一般に、強力に酵素に結合することが知られており、酵素から外れないとさえ思われている。しかしながら、私たちの阻害剤は、FADのKmには及ばないが約0.027mMという補酵素修飾阻害剤にしては強力な結合を示した。グルタチオンは血管新生阻害や寄生生物に対する創薬ターゲットであることが知られており、我々の化合物はこの濃度では、細胞毒性が全く示さないことが現在明らかになりつつあることから有効なグルタチオンリダクターゼ阻害剤であると考えられる。このように、私たちが提唱するNADの立体配座を基盤とする酵素分類を基盤として、有効な化合物と創薬ターゲットを見いだせたことは、有意義である。また、アルドースリダクターゼに対する補酵素―基質複合型阻害剤の合成に着手している。化合物の水溶性が高く、クリックケミストリーを利用した方法では、原料との分離が困難であったため、反応の検討を行い、水溶性化合物に対する改良法を開発した私たちの方法は無機塩を活性化に利用する方法で、アミンを利用する方法よりも化合物の分離が容易である点が優れている。この方法を利用することで、アルドースリダクターゼに対する補酵素―基質複合型阻害剤の効率的な合成が可能になった。今後、これらの阻害作用の検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が提唱した新しい概念が創薬に使えるということが示された点は、本研究の核心的な部分が達成されたことになり、今後はその応用ということになる。また、新しい創薬ターゲットが見つかったので結果としては満足が行くものである。人口補酵素に関しては安定性に問題があるが合成ができるということが確認できた。しかしながら、化合物の活性を示すための有効な酵素の選定ができていない。こちらに関しては、進展がやや遅れている。したがって、当初の予定どおりではないが、新しい展開が生まれて発展していると考えれば至って順調である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、酵素分類における第3のカテゴリーに属する酵素NADキナーゼおよびNAD環化酵素に対して阻害活性の測定を行う。また、NAD-基質複合型阻害剤の作成に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
酵素の活性測定に必要な消耗品並びに、結果の公表に必要な論文作成経費などに使用する予定である。
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