生体には医薬品や環境化学物質などの生体外異物に対する防御機構が備わっている。脂溶性の生体外異物が生体内に侵入すると、これを認識した受容体型転写調節因子が核内へ移行し、薬物代謝酵素などの標的遺伝子の発現を誘導し、異物の代謝・排泄が促進される。本研究では、異物受容体として知られるConstitutive Androstane Receptor(CAR)の生体外異物に対する薬物代謝酵素の誘導などを介した防御のみでなく、エネルギー代謝に対する作用を検討した。その結果、CARはAMPKβと結合し、AMPKの活性を調節することを明らかとした。さらに、CARの機能を明らかとするため、新たな結合タンパク質として、DP97、Hsp60、PRMT5を同定した。DP97、PRMT5はCARによる転写活性に関与するコアクチベーターとして機能することを明らかとした。また、Hsp60はCARと結合することにより、CARタンパク質の安定性に関与する可能性が考えられた。同時に、CARの機能を調節するリガンドの探索も行った結果、核内受容体LXRのリガンドとして知られているTO901317がCARのinverse agonistであることを明らかとした。本研究より、CARの新たな結合タンパク質として、AMPKβ、DP97、PRMT5、Hsp60を見出し、CARの活性調節機構及び機能の新たな可能性を示した。また、CARの活性を調節するリガンドの候補としてTO901317を明らかとすることが出来た。
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