研究課題/領域番号 |
23790106
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
森田 雄二 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (00454322)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 多剤耐性緑膿菌 |
研究概要 |
我が国及び外国の多剤耐性緑膿菌臨床分離株NCGM2.S1(旧:IMCJ2.S1)(以下S1)とPA7から多剤排出ポンプMexXY(-OprA), MexAB-OprMに関する一連の遺伝子破壊株を相同組換え法により構築した。S1やPA7はアミノ配糖体修飾酵素を産生するにも関わらず、MexXY欠損でアミノ配糖体(アミカシンなど)に大きく感受化した。これに関して国内国際学会や原著論文で発表した。S1は、両ポンプ欠損でキノロン(シプロフロキサシンなど)に大きく感受性化したが、PA7は、DNAジャイレース・トポイソメラーゼIVにS1と同じ変異を持つにも関わらず、両ポンプ欠損だけではキノロンにほとんど感受性化しなかった。これは多剤排出ポンプMexEF-OprNの遺伝子発現の差であることを明らかにし、学会で発表した。また両株とも、両ポンプ欠損でβラクタム剤(イミペネム、セフピロムなど)にほとんど感受性化しなかった。その原因はβラクタム分解酵素など排出ポンプ以外の耐性機構によるものと考えられる。 名古屋市東山総合公園の植物園の土壌から土を採取し、微生物由来DNA(eDNA)を抽出した。現在抽出したeDNAからメタゲノムライブラリーを構築中である。ベクターの抗菌薬耐性のため、eDNAを獲得した大腸菌形質転換株の方が、多剤耐性緑膿菌S1やPA7由来の排出ポンプ欠損株より耐性であり、耐性克服遺伝子の探索が困難になることが予想された。そこで多剤耐性緑膿菌排出ポンプ欠損株の染色体にベクターと同じ抗菌薬耐性マーカーであるクロラムフェニコールアセチル化酵素遺伝子を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多剤耐性緑膿菌NCGM2.S1やPA7から抗菌薬透過性バリアである多剤排出ポンプの欠損株を構築することができた。また土壌から微生物由来DNAの抽出法を確立した。したがって多剤耐性克服遺伝子探索に必要な部分の多くを達成できたと考えている。各種抗菌薬の細胞内蓄積量の測定など遺伝子破壊株の詳細な生化学的解析や必須遺伝子条件的伝子破壊株の構築などは平成23年度に出来なかったが、前者は研究全体の進展に影響のない部分であり、また後者は必須の部分ではない。以上のことから交付申請書に記載した「研究の目的」は概ね交付申請書通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
名古屋市東山総合公園だけでなく数箇所の土壌から土を採取し、微生物由来のDNAを抽出し、メタゲノムライブラリーを構築する。さらに交付申請書通り多剤耐性克服遺伝子を探索する。候補遺伝子が得られたら、その塩基配列を決定し遺伝情報解析を行う。さらに遺伝子産物の抽出・精製・同定を試みる。また多剤耐性緑膿菌多剤排出ポンプ欠損株の各種抗菌薬の細胞内蓄積量、外膜透過性など生化学的解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度同様、研究費の大部分は研究遂行に必要な消耗品の購入に用いる。またその他として研究成果の発表、耐性菌やベクターの分与、研究打ち合わせなどに用いる。
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