研究課題
Fgf (fibroblast growth factor)21は主に肝臓由来の内分泌因子として白色脂肪組織に作用し、その機能維持に重要な役割を果たすと考えられている。高脂肪低炭水化物食(ケトン食)の飼育により、Fgf21の肝臓での発現や血中濃度が上昇することから、本課題では、その生理的意義について検討を試みた。前年度において、6日間ケトン食で飼育したFgf21ノックアウトマウスについて、インスリン負荷試験を行ったところ、インスリン投与後90分以降において、血糖の回復が遅くなることが明らかになった。これは白色脂肪組織におけるインスリン感受性の上昇が原因と考えられた。本年度、実際に、通常食飼育した野生型マウスとケトン食飼育した野生型マウスとで、インスリンシグナルを検討したところ、白色脂肪組織特異的にインスリン感受性が低下する可能性が示唆された。前年度の成績を含めて考察すると、ケトン食飼育により血中脂質や体重などの変化に先駆けて、Fgf21のシグナリングを介して、白色脂肪組織のインスリン感受性の低下が起こることが明らかとなった。また一方で、この血糖の回復は、肝臓における糖産生の低下も考えられる。そこで、本年度において肝臓における糖産生に関して検討を試みた。まず糖産生に関わる内分泌因子として、グルカゴンの血中濃度を検討した。ケトン食飼育により野生型マウスではグルカゴンの血中濃度が上昇したが、野生型とノックアウトマウスで比較しても、血中濃度に差は認められなかった。また、肝臓における糖新生に関わる因子(PGC-1a、PEPCK、G6Pase)の発現も検討したが、やはり通常食、ケトン食飼育ともに野生型、ノックアウトマウス間で差は認められなかった。したがって、Fgf21はケトン食飼育時の肝臓における糖産生には関わらないことが明らかとなった。
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