研究課題/領域番号 |
23790113
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
高田 芙友子 福岡大学, 薬学部, 助教 (70412575)
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キーワード | 脳ペリサイト / 糖尿病 / シクロフィリンA / メチルグリオキサール / 脂質ラフト / 視床下部神経 |
研究概要 |
本研究は、血液脳関門(BBB)および視床下部・海馬機能を調節する「脳神経血管機構」の基幹細胞として「脳ペリサイト」を捉え、本細胞が高血糖状態を感知し、シクロフィリンA (CypA)などの液性因子を介してBBB・脳神経のインスリン抵抗性を惹起することにより、糖尿病病態の形成・進展を担う可能性を追求する。 前年度にCypAのBBB機能に対する作用を明らかにした。一方、視床下部神経におけるインスリン抵抗性発現機序については不明な点が多い。そこで、平成24年度はCypAによる脳神経のインスリン抵抗性発現機序を調べるための基礎検討として、高血糖状態下で血液中および脳内で増加するメチルグリオキサール(MG)をモデル化合物として用い、視床下部神経のインスリン抵抗性発現について検討した。 マウス視床下部神経細胞株GT1-7にMGを負荷した後、インスリンを添加し、リン酸化Akt量を指標にインスリン感受性を評価した。(1)MGは細胞傷害を惹き起こさない濃度でインスリンによるリン酸化Aktの増加を抑制した。(2)MGはGT1-7のNF-kB活性化を惹き起こさなかった。(3)MG負荷後のGT1-7のインスリン受容体発現量を検討した。インスリン受容体はMG負荷後においても細胞膜分画に発現が認められ、MGによってその発現量は変化しなかった。(4)MGはインスリン受容体が局在するとされる脂質ラフトの構成成分であるflotillin-1を減少させた。 以上、MGは視床下部神経においてインスリン抵抗性を惹起する。これはMGがインスリン受容体の局在部位である脂質ラフトを破壊することに起因するかもしれない。本知見は、CypAのインスリン抵抗性発現において標的となる膜微小領域及び分子を提示するものとして意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病病態下での視床下部インスリン抵抗性形成過程におけるCypAの役割を明らかにするため、まず視床下部インスリン抵抗性形成機序として、flotillin-1発現量の減少を明らかにした。本年度はCypAによる脳神経インスリン抵抗性発現機序における標的を明らかにした点で、研究の進捗状況としてはおおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
CypAによる血液脳関門機能の病態依存的調節についてさらに追究するとともに、摂食中枢を担う視床下部神経に着目し、そのインスリン感受性に対する脳ペリサイト由来液性因子(CypAを含む)の影響を、特にインスリン受容体およびflotillin-1発現量の点から明らかにする。また糖尿病モデル動物の脳切片を用いてCD147発現量の変化についても検討する。これらの成果は「脳神経血管機構」の糖尿病病態における脳ペリサイトの役割の解明に繋がる「糸口」となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験用動物:脳血管内皮細胞および脳ペリサイトは初代培養細胞を用いるため、実験用動物購入のため、20万円必要となる。培養関連試薬:初代培養細胞を採取する為の試薬や培養細胞の培養・維持に培地、血清などの試薬を使用するため、25万円必要となる。培養器具:In vitro BBBモデル作製にCostar社 12 well Transwell(1箱約2万5千円)が必要である。また、細胞の培養・維持にフラスコ等が必要となるため、35万円必要となる。旅費等:成果発表の為、年1回開催される国際学会への参加、さらに論文投稿にかかる費用として、30万円計上した。
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