研究課題
本研究の主眼は、脳内環境を制御する「脳神経血管機構(neurovascular unit)」の基幹細胞として「脳ペリサイト」を捉え、本細胞がシクロフィリンA (CypA)などの液性因子を介して脳神経のインスリン抵抗性を惹起し、糖尿病病態の形成・進展を担う可能性を追求することにある。肥満誘発性糖尿病モデル動物におけるCypAおよびその受容体CD147発現量の変化;高脂肪食を8週間摂食させ肥満誘発性糖尿病モデルマウスを作製した。このモデルマウスでは、脳内CypAおよびCD147発現量の有意な増加、また、ペリサイトを含む脳微小血管のそれら発現量の軽度増加が認められた。従って、肥満誘発性糖尿病病態下では、脳内CypA-CD147シグナルが活性化している可能性があり、この活性化にペリサイトのCypA産生量およびCD147発現量の増加が寄与する可能性が示唆された。糖尿病病態時における視床下部神経インスリン感受性に対するCypAの作用;糖尿病病態時に脳内および血液中で増加する炎症性サイトカインTNF-aおよび糖化産生物質メチルグリオキサール(MG)をマウス視床下部神経細胞GT1-7に負荷し、糖尿病病態時における視床下部神経モデルを作製した。このモデルを用いて糖尿病病態下での視床下部神経のインスリン感受性に対するCypAの作用について検討した。その結果、CypAはMGによるインスリン感受性低下作用に対しては影響しなかったが、TNF-a存在下ではインスリン感受性低下を増悪させることが判った。以上、糖尿病病態下では、脳ペリサイト/脳微小血管組織のCypA産生増加およびその受容体CD147発現増加に伴うCypA-CD147シグナル活性化が、視床下部神経のインスリン感受性低下を惹起する可能性が示唆された。この脳神経血管機構の異常が糖尿病病態の形成・進展に寄与するものと推測される。
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 19; 433(4) ページ: 586-590
10.1016/j.bbrc.2013.03.036.