研究課題/領域番号 |
23790119
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研究機関 | (財)東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
武富 芳隆 (財)東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主任研究員 (40365804)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アレルギー / マスト細胞 / ホスホリパーゼA2 / 遺伝子改変マウス / 分化成熟 |
研究概要 |
申請者はリン脂質代謝酵素ホスホリパーゼA2 (PLA2) 分子群のひとつであるIII型分泌性PLA2 (sPLA2-III) の欠損マウスの解析を通じて、本酵素が即時型アレルギー応答調節因子として機能することを見出した。即ち、sPLA2-IIIはマスト細胞に発現し、本細胞の活性化と分化成熟を促進させることでアナフィラキシーを制御する。本申請ではこの知見を更に発展させ、sPLA2-IIIによるマスト細胞調節の分子機構を脂質ネットワークの観点から明らかにすることを目的とした。本年度は、研究実施計画に添った手法、即ち、プロファイリング的、薬理学的、遺伝子欠損マウスの解析によるGeneticアプローチの3つのアプローチによりsPLA2-IIIの下流でマスト細胞の分化成熟を制御する脂質メディエーター経路の同定を試みた。その結果、マスト細胞から分泌されたsPLA2-IIIは局所環境のリポカイン型プロスタグランジンD2 (PGD2) 合成酵素L-PGDSを通じてPGD2を産生すること、このPGD2はマスト細胞のPGD2受容体DP1に作用することでマスト細胞の分化成熟を促進させることを見出した。本研究は、sPLA2がパラクライン的に局所環境の脂質メディエーターを動員して生命応答を制御することを明確に示したものである。これまで、マスト細胞の分化成熟にはSCFが必須であることは知られていたが、SCF単独では作用が不十分であり、局所環境中の未知なる因子の関与が想定されていた。このAnaphylactic sPLA2の下流でマスト細胞の調節に関わるユニークな細胞間脂質ネットワークはこの謎を解明するものであると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請における研究目標は大きく二分される。ひとつはsPLA2-IIIによるマスト細胞制御機構の解明 (平成23年度計画)、もうひとつはsPLA2-IIIによる複合型アレルギー調節機構の解明 (平成24年度計画) である。このうち、本年度はマスト細胞を制御する新たな脂質代謝ネットワークを同定することで、sPLA2-IIIによるマスト細胞制御機構の全貌解明に成功した。これは前回申請 (若手研究B) より継続して進めてきた研究の集大成といえるものであり、その意義は極めて大きい。
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今後の研究の推進方策 |
sPLA2-IIIによるマスト細胞制御機構の解明 (平成23年度計画) については研究成果を論文発表することを目指す。次年度計画であるsPLA2-IIIによる複合型アレルギー調節機構の解明については既に着手しており、sPLA2-IIIの欠損マウスでは、接触性皮膚炎(Th1応答)及びアトピー性皮膚炎(Th2応答)が野生型マウスと比較して増悪することを見出している。そこで本年度はこの知見を発展させ、これらの生命応答において、(1) sPLA2-IIIはどの組織細胞に発現しているのか、(2) sPLA2-IIIにより制御を受ける責任細胞の同定、(3) sPLA2-IIIのターゲットとなる膜リン脂質の同定、などの視点からsPLA2-III依存的な脂質代謝ネットワークの解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
東北地方太平洋沖地震に伴う節電徹底により適切な環境のなかで十分な研究時間を確保できなかったため、必要経費を次年度使用額として繰り越した。次年度の研究費の使用計画としては、当初の予定通り、遺伝子関連試薬、免疫化学連試薬、染色用試薬、細胞培養試薬などの購入を見込む。また、1年次に予定していたマイクロアレイ用試薬を購入する。器具消耗品は細胞培養フラスコ、マイクロプレートなどの購入を見込む。実験動物の管理維持に必要な経費は、一部を本研究費より支出し、残りは所属研究機関の公費でまかなう。
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