研究課題
アナフィラキシー誘発物質として知られるハチ毒ホスホリパーゼA2(PLA2)の唯一の哺乳動物ホモログであるIII型分泌性PLA2(sPLA2-III)はマスト細胞の成熟因子として機能することでアナフィラキシーを制御する知見を得ている。本研究では本酵素を起点とした細胞外脂質ネットワークの解析を行った。①脂質メディエーターの合成酵素・受容体欠損マウス18種のうち、プロスタグランジンD2(PGD2)合成酵素L-PGDSならびにPGD2受容体DP1の欠損マウスにおいて、sPLA2-III欠損マウスと同一の表現型、すなわち、組織マスト細胞の成熟不全とアナフィラキシーの改善を呈した。②マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)と線維芽細胞の共培養によるマスト細胞の成熟において、野生型BMMCの成熟は共培養系へのDP1アンタゴニストの添加により抑制され、またDP1欠損BMMCを用いた共培養でも抑制された。③L-PGDSの発現はマスト細胞を取り巻く線維芽細胞に発現していた。野生型BMMCの成熟は共培養系へのL-PGDS阻害剤の添加、あるいはL-PGDSの発現をsiRNAによりノックダウンした線維芽細胞と共培養すると抑制され、さらにL-PGDS欠損マウス由来線維芽細胞との共培養でも抑制された。④sPLA2-IIIはヒトマスト細胞にも発現していた。ヒト肺マスト細胞と線維芽細胞の共培養によるマスト細胞の成熟は、抗sPLA2-III抗体、DP1アンタゴニスト、L-PGDS阻害剤の添加によりそれぞれ抑制された。以上より、sPLA2-IIIはサイトカインSCFの刺激によりマスト細胞から分泌され、隣接する局所微小環境(線維芽細胞)のL-PGDSと連関してPGD2を産生し、このPGD2はマスト細胞のDP1受容体を活性化して、マスト細胞の成熟を促進することを明らかとした(Nat. Immunol. 2013)。
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