研究課題/領域番号 |
23790122
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
近藤 嘉高 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20507397)
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キーワード | 代謝 / 生化学 / 酵素 / 動物 / ペントースリン酸経路 / グルコン酸キナーゼ |
研究概要 |
ペントースリン酸経路は、グルコース6-リン酸をグルコノラクトン6-リン酸、グルコン酸6-リン酸を経て、グリセルアルデヒド3-リン酸に代謝し、NADPHおよび核酸原料の供給を担う。細菌類では、グルコースからグルコノラクトン、グルコン酸を経て、グルコン酸6-リン酸に至る副経路が存在する。しかし、動物において副経路が存在するかどうかは不明である。本研究では、ヒトおよびマウスにおいてグルコン酸をグルコン酸6-リン酸にリン酸化するグルコン酸キナーゼを同定、酵素学的性質を解析した。 NCBIのBLAST検索の結果、細菌Pseudomonas putida KT2440におけるグルコン酸キナーゼ遺伝子のアミノ酸配列は、ヒトおよびマウスにおける候補遺伝子(GenBank accession no.NM_001001551およびNM_198004)のアミノ酸配列とそれぞれ70%および69%の相同性を示した。候補遺伝子は、ヒトおよびマウスの肝臓からmRNAを抽出後、cDNAライブラリーよりクローニングした。N末端に6×Hisを融合した組換えタンパク質は、候補遺伝子をpColdIIベクターに組換えて大腸菌に形質転換した後、15℃で24時間培養して大量発現させた。可溶性分画に発現が認められたので、Ni-NTA agaroseカラムおよびDEAE-Sephacelカラムを用いて純度95%以上に精製した。精製したヒトおよびマウスの6×His融合組換えタンパク質は、グルコン酸キナーゼ活性が認められた。さらに、ヒトおよびマウスの6×His融合組換えタンパク質を抗原としてウサギに免疫した後、抗血清を得た。ウェスタンブロット法による解析の結果、各抗血清は、ヒトおよびマウスの6×His融合組換えタンパク質と反応することが明らかとなった。 以上の結果から、動物におけるペントースリン酸副経路の存在が強く示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトおよびマウスのグルコン酸キナーゼ組換えタンパク質の発現誘導および可溶化、精製の条件検討に当初の予想より時間を要したが、高純度の精製タンパク質を得ることに成功した。また、同組換えタンパク質を用いてウサギに免疫、ポリクローナル抗体を得た。精製組換えタンパク質および抗グルコン酸キナーゼ抗体は、次年度の解析に必須のツールであることから、今後解析が進むと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
RT-PCR法およびウェスタンブロット法により、ヒトおよびマウスにおけるグルコン酸キナーゼの発現臓器を検討する。また、免疫組織化学染色により発現部位も調べる。 代謝におけるグルコン酸キナーゼの生理的役割を明らかにするため、培養細胞にグルコン酸キナーゼ遺伝子に対するsiRNAを導入したノックダウン細胞および過剰発現細胞を作製する。ペントースリン酸経路および副経路の各酵素の発現量はリアルタイムPCR法を用いて、細胞内NADPH濃度はHPLC法を用いて測定し、グルコン酸キナーゼの変動が代謝系に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
HPLCのカラムやバイアル、プライマー、ポリメラーゼ、制限酵素、ベクター、siRNA導入及びトランスフェクションの試薬、リアルタイムPCRプローブや測定キット、培養細胞、培地、その他チップやチューブ等消耗品の費用が必要となる。また、本研究の成果を学会発表するための旅費、論文発表するための掲載料が必要となる。
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