研究概要 |
1)分子内Diels-Alder反応を鍵反応としたLycoposerramine-Rの全合成:昨年に低収率ながらラセミ体でのリコポセラミン-Rの全合成は達成したことを受け、本年はその不斉化と合成ルートの改善に取り組んだ。鍵反応であるDiels-Alder反応において、種々の不斉補助基を有するジエンを合成し詳細に反応条件を検討したところ、不斉補助基としてオキサゾリジノンを有するジエンを用いた際に収率53%、80%eeで目的物を得ることができた。さらに反応条件を検討したところ、最大で98%eeで環化体を得ることができたが、そのときの収率は14%であった(80%は原料回収)。今後、さらなる条件検討と合成経路の改善を行う。 2)AChエステラーゼ阻害作用を有する植物性アルカロイドの徹底的追求:タイ産Lycopodium nummularifolium について成分探索をおこない、数種の新規アルカロイドを単離・構造決定した。 3)Pauson-Khand反応を利用した新規アルカロイドLycoposerramine-S, Aの不斉全合成:当研究室で達成したリコポセラミン-Cの全合成と同様の合成ルートを用い、リコポセラミン-SおよびAの全炭素骨格を持つ化合物の合成に成功した。続いて、ノシルアミンを用いた光延反応により、1位-9位間の窒素原子を導入した。今後、5位に2つめの窒素原子を導入した後、リコポセラミン-SおよびAの全合成を達成する予定である。 4)リコリン誘導体の効率的合成:リコリン誘導体の効率的合成を目指し、種々Diels-Alder反応前駆体を合成してDiels-Alder反応を試みたが、目的の環化体は得られなかった。[4+2] / [3+2] 連続環化反応を用いた合成については今のところ実施していない。
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