研究課題/領域番号 |
23790127
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森 修一 東京医科歯科大学, 大学院疾患生命科学研究部, 特任助教 (00467630)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ヒストンメチル化 / エピジェネティクス / 蛍光プローブ / SNAr反応 |
研究概要 |
ヒストンメチル化酵素(HMT)は、エピジェネティックな遺伝子発現制御などの様々な生命現象に関わっている酵素群である。しかしながら、HMTの簡便な活性検出法は開発されていないため、ケミカルツールとしての阻害剤開発の進展は滞っている。本研究によって申請者は、基質タンパクのリジン残基のメチル化の有無を識別することによって、蛍光特性を変化させるような蛍光色素を創製し、それを利用したHMTの阻害剤スクリーニング系を構築することを目的とした。23年度は研究計画に基づき、以下の2点を行った。1) リジン、メチル化リジンとニトロベンゼン誘導体のSNAr反応の解析アミノ基の定量法であるトリニトロベンゼンスルホン酸法が、一級アミン選択的であることを見出したことに基づき、様々なニトロベンゼン誘導体と、リジンもしくはメチル化リジンとのSNAr反応の反応速度解析と生成物の分光学的な評価を行った。その結果、脱離基がSO3-の時には反応速度はリジン選択的であるが、脱離基がF-になると選択性が逆転し、メチル化リジン選択的に反応が進行することが明らかとなった。さらに芳香環に導入する置換基が選択性に影響を与えることを見出し、最大で17倍のメチル化リジン選択性を達成することに成功した。2) ニトロベンゼン誘導体を導入した蛍光プローブの設計と合成1)において見出した反応性の差を利用して、リジンとメチル化リジンを検出する蛍光プローブを設計した。具体的には蛍光分子であるBODIPYに対して、反応速度の差が大きかったニトロベンゼン誘導体を導入し、リジン、もしくはメチル化リジンとのSNAr反応の前後で蛍光特性が変化するような分子を設計し、現在合成を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度に関しては順調に進んでいると評価している。リジン、メチル化リジンとニトロベンゼン誘導体の反応解析を、当初の計画よりも詳細に検討した。その結果、ニトロベンゼン誘導体の脱離基の違いによる選択性の変化など、これらのSNAr反応における大変興味深い知見を得ることができた。これらの知見により、望みの機能を持つ蛍光プローブに関して分子設計の選択肢を大幅に広げることができた。このことは今後の効率的な研究の進展にとって非常に有益であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度の研究方針は以下の2点を計画している。3)リジン、メチル化リジンを識別する蛍光プローブの創製 まずは蛍光色素BODIPYにニトロベンゼン誘導体を導入した分子の合成を行う。これは、リジンもしくはメチル化リジンがニトロベンゼン部位と反応し、ニトロベンゼン部位の電子密度が増加することによって、BODIPYの蛍光特性が変化することを指向したものである。合成した分子の蛍光特性、リジン、メチル化リジンとの反応性を評価した後、実際のヒストンメチル化検出系への応用可能性を検討する。蛍光特性の変化や感度が十分でなかった場合には、蛍光色素部位の変更や、1)で得られた知見に基づいた、別のメカニズムを利用した分子に変更するなどの対策を行う予定である。4)ヒストンメチル化検出系への応用 3)で創製した蛍光プローブを用いて、ヒストンリジン残基メチル化の新規評価系を構築する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
来年度の研究費は主として、3)において必要な合成用試薬・器具、また4)において必要なヒストンメチル化酵素などの生化学用試薬など、実験に用いる消耗品の購入に当てる予定である。
|