研究課題
医薬分子において疎水性構造は、分子の全体構造を規定する骨格としての役割のみでなく、標的分子との疎水性相互作用の形成、あるいは物性や体内動態を決定する要因になる等、多彩な役割を担っている。本研究は、炭素の同族である14族高周期元素について、生理活性分子の疎水性フラグメントとしての性質を検討する。本年度は、解析対象とした4位に種々のトリアルキルシリル基あるいはトリアルキルゲルミル基を有するフェノール誘導体の合成と、疎水性の計測を行った。目的とする化合物の多くは、4-ブロモフェノールを原料として単工程で合成可能であることがわかった。いくつかの嵩高い置換基を有するフェノール類の合成には、フェノール性水酸基の保護、脱保護が必要であった。合成した化合物について、OECDガイドラインに従いHPLCを用いたオクタノール/水分配係数Pの測定を行い、対応する炭素誘導体との比較を行った。その結果トリアルキルシリルフェノールは、アルキル基の種類に関わらず、対応する炭素置換基を有するフェノールと比較しlogP値にして約0.6高い疎水性を示した。また、トリアルキルゲルミルフェノールも対応する炭素置換基を有するフェノールと比較して約0.6高いlogP値を示し、ケイ素誘導体とゲルマニウム誘導体では疎水性の差は見られなかった。測定したlogP値を基に、定量的構造活性相関などに重要なパラメータである置換基の疎水性パラメータπの算出を行った。
2: おおむね順調に進展している
物性解析の対象とした4位置換フェノール化合物の合成法を確立し、必要な化合物の調整を終了している。合成したフェノール類について分配係数の評価系を確立し、測定を終了した。また、種々のトリアルキルシリル基およびトリアルキルゲルミル基について、バーチャルスクリーニングや定量的構造活性相関に重要な疎水性パラメータの算出を完了した。
トリアルキルシリル基およびトリアルキルゲルミル基の物性解析を進める目的で、芳香環に与える電子的な置換基効果を測定する。具体的にはフェノール性水酸基の酸解離定数pKaの測定を行い、置換基定数の算出を行う。合成したフェノール類について、ステロイドホルモン核内受容体であるエストロゲン受容体に対する活性を評価し、高周期14族元素を含有する化合物の生理活性化合物への展開の方法論を開拓する。一分子内に複数の高周期14族元素を含有する化合物の合成法を開拓する。
合成法開発および物性解析のために必要な有機溶媒、試薬類およびガラス器具等を購入する。生理活性評価に必要なタンパク、放射標識化合物、細胞培養に必要な培地等を購入する。本研究で得られた知見を国内外の学会で発表するための旅費交通費を必要とする。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (18件) 産業財産権 (1件)
Bioorg. Med. Chem. Lett.
巻: 22 ページ: 1756-1760
10.1016/j.bmcl.2011.12.137
J. Am. Chem. Soc.
巻: 133 ページ: 20933-20941
DOI:10.1021/ja208797n
Med. Chem. Commum.
巻: 2 ページ: 877-880
10.1039/c1md00001b
Tetrahedron
巻: 67 ページ: 6073-6082
10.1016/j.tet.2011.06.018
Bioorg. Med. Chem.
巻: 19 ページ: 3540-3548
10.1016/j.bmc.2011.04.017
J. Med. Chem.
巻: 54 ページ: 7055-7065
10.1021/jm2005404