研究課題/領域番号 |
23790133
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川原 浩一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (10347015)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インターロイキン4 / 2型ミクログリア / アルツハイマー病 / レチノイン酸受容体 / レチノイドX受容体 / Am80 / HX630 |
研究概要 |
申請者は「IL-4やIL-13により、ミクログリアのサブタイプの一つ(2型)が選択的に活性化され、Aβオリゴマーのクリアランス機能が顕著に誘導されること」を見出した (J. Immunol. 2008)。また、IL-4/IL-13をアルツハイマー病(AD)モデルマウス(APP23)の脳内へ直接微量注入すると、空間認知障害が改善されるとともに、投与側のAβ蓄積量が減少した(Neuroscience, 2012)。本研究では、IL-4誘導剤としてレチノイド類に注目し、レチノイドがADモデルマウスの空間認知能力と脳内Aβ蓄積量に与える影響を調べた。 レチノイン酸受容体(RAR)アゴニスト・Am80とレチノイドX受容体(RXR)アゴニスト・HX630をAβプラークが蓄積した8.5月齢のAPP23マウスに2週間連日経口投与し、空間認知能力に対する影響をモリス水迷路試験で調べた。また、脳内Aβ蓄積量に対する影響をAβ ELISA法で調べた。その結果、Vehicle群と比較し、Am80/HX630の併用投与群では、APP23マウスの空間認知障害が有意に改善された。また、脳内Aβ蓄積量も、Am80/HX630併用投与により、有意に減少した。一方、Am80単独群、およびHX630単独群では、Aβ減少作用や空間認知障害の改善作用は認められなかった。RARはRXRとへテロダイマーを形成するため、Am80によるRAR作用をHX630が増強する可能性がある。そこでpGL3-RARE-lucベクターを用いてレポーター活性を調べたところ、Am80刺激によるレポーター活性の上昇は、HX630の共添加により増強された。以上のことから、レチノイドによる効率的なAD病態改善作用には、RARアゴニストの単独投与では不十分であり、RXRアゴニストによるRARシナージスト作用が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、これまでにレチノイン酸受容体アゴニスト・Am80の経口投与は、ADモデルマウス(APP23)の脳内不溶性Aβ42ペプチドを有意に減少させることを見出している(Biol Pharm Bull., 2009)。しかしながら、Am80単独投与では、APP23マウスの空間認知障害の改善作用は認められなかった。本研究では、Am80の高用量、およびレチノイドX受容体アゴニスト・HX630との併用投与の検討を行った結果、後者の場合において、空間認知障害が有意に改善されることを見出した。また、Am80/HX630併用投与により脳内不溶性Aβ42ペプチドも有意に減少した。残された課題は、併用投与により、どのような機序でAβ減少作用や行動改善作用が起こったかを調べることである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Aβクリアランスに関わる分子群について、RNAレベルでの解析、およびproteinレベルでの解析を行う。また、in vitroの予備的検討において、Am80/HX630併用投与において、IL-4受容体αのprotein levelが有意に上昇する結果を得ているため、その分子機序と、in vivoでの発現変化を調べる。また、申請者が見出した1型ミクログリアを認識するモノクローナル抗体の抗原同定を行う。さらに、1型と2型ミクログリアの根本的性質の違いを調べるために、それぞれの細胞からRNAを抽出し、cDNAマイクロアレイを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の未使用額の大半は、昨年度末に立替え払いを行った論文別刷代に充てる(4月下旬支払い予定)。 今年度は、Aβクリアランスに関わる分子群について、RNAレベルでの解析、およびproteinレベルでの解析を行うため、分子生物学試薬や生化学試薬を購入する。また、論文投稿料に関わる経費を計上する。 1型ミクログリアを認識するモノクローナル抗体の抗原同定に関わる試薬を購入する。 また、1型と2型ミクログリアのマイクロアレイ解析に関わる経費(実験動物購入費、細胞培養試薬、RNA調製試薬)を計上する。
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