研究概要 |
申請者はこれまでに、アルツハイマー病(AD)モデルマウスAPP23にIL-4/IL-13を脳内微量注入すると、脳内Aβ蓄積量が減少するとともに空間認知障害が有意に改善されることを見出した (Kawahara et al., 2012)。本研究では、IL-4誘導剤としてレチノイド類に注目し、APP23マウスのAD病態を改善させるかを調べた。 RARアゴニスト・Am80 (0.5 mg/kg/d)とRXRアゴニスト・HX630 (5 mg/kg/d)をAβプラークが蓄積した8.5月齢のAPP23マウスに17日間連日経口投与し、空間認知能力に対する影響をモリス水迷路試験で調べた。また、脳内Aβ蓄積量に対する影響をAβELISA法で調べた。その結果、vehicle群と比較し、Am80/HX630の併用投与群では、APP23マウスの不溶性画分のAβペプチドが有意に減少し、空間認知障害が有意に改善された。このような改善作用は、それらの単独投与群では認められなかった。これらの結果は、レチノイドによる効率的なAD病態改善作用には、RARとRXRの同時活性化が必要であることを示唆する。 さらに申請者は、レチノイドによる記憶改善作用における脳内IL-4の関与を調べた。Am80/HX630併用投与により、APP23マウスの大脳皮質のIL-4量は変化しなかったが、海馬IL-4は増加傾向にあった。また、vehicle群とは対照的に、Am80/HX630併用投与群において、海馬IL-4量とモリス水迷路試験で評価される記憶保持力が有意な正の相関を示した。また、in vitroにおいて、Am80/HX630共添加はミクログリア細胞のIL-4受容体αの発現を増大させた。これら結果は、APP23マウスにおける海馬IL-4シグナルの障害が、Am80/HX630併用投与により正常化されることを示唆する。
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