研究課題/領域番号 |
23790134
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 雅紀 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (30505251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シデロフォア / 生合成 / メタゲノム |
研究概要 |
これまでに有明海の干潟砂泥から作成したメタゲノムライブラリからシデロフォア生合成遺伝子を取得し、その産物としてvibrioferrinを同定した。干潟砂泥由来のvibrioferrin生合成遺伝子は過去にvibrioferrinの生産が報告されている海洋細菌Vibrio parahaemolyticus 由来の生合成遺伝子と99%の相同性を示すものであった。 一方、新たな機能性遺伝子の探索を目指し天草諸島において採集した海綿やホヤなどの海洋無脊椎動物あるいは海藻などの海洋生物からメタゲノムライブラリを作成し、同様に金属結合物質であるシデロフォア生産の有無でスクリーニングを行ったところ、顕著な活性を示すクローンを複数取得した。そのうちの一つについて生合成遺伝子のDNA配列を決定したところ、干潟砂泥由来vivrioferrin生産クローンと70%程度の相同性を示すクローンであった。 これまでにvibrioferrinの生産が確認されている遺伝子とは系統的に異なる事、また過去にvibrioferrinの類縁化合物は報告されていないことから、新規化合物を生産する遺伝子である可能性を考え、その生産物の解析を進めた。 その結果、vibrioferrinと各種クロマトグラフィーにおける挙動が似ている活性化合物(化合物A)と、大きく異なる活性化合物(化合物B)が存在する事が明らかになった。化合物Aを精製しNMRを測定したところ、vibrioferrinに特徴的なシグナルを有するのの、異なる点も存在し、類縁化合物である可能性が示唆された。一方、化合物Bに関しては部分精製の段階であるが、vibrioferrinの生合成中間体の異性体のような化合物である可能性が考えられ、新しい反応性を有する生合成酵素を取得したことが期待される。本結果は日本薬学会第132年会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに知られていない新規シデロフォア生合成遺伝子を取得し、その生産物の解析を行ったところ、類縁酵素とは異なる生産物である可能性が示唆された。このような新規遺伝子の取得と解析は、今後の変異株作成による生産化合物の構造変換、あるいは生合成メカニズムの解析において重要である。現在生産物の精製と同定を進める一方、既知酵素との違いの比較あるいは融合による変異株のデザインを進めており、これまでf名であったvibrioferrin生合成経路の解明や異性体の生合成につながると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今回取得した海洋生物メタゲノム由来のシデロフォア生合成クローンの生産物を精製・同定する。生合成酵素の相同性が70%程度ということから、類縁酵素が生産するvibrioferrinと大きく異なる化合物が生産される事は考えにくく、vibrioferrinと同様のしゅほうにより精製と構造決定が可能であると推測される。物性が大きく異なる化合物についても、生合成の途中において本来の基質とは異なるものをとりこみ、その後の変換が停止した中間体などのvibrioferrin関連化合物であることが推測されるため、その精製と同定は短期間により可能であると推測される。また生産物が既知酵素と異なる場合はその違いを生み出す機構について、変異株などの作成により解明を進めていく。またもしどちらもvibrioferrinを生産する場合は、生産効率の高い遺伝子を用いて、これまで全く未知であるvibrioferrin生合成経路の解明を進め、論理的な生合成的構造変換のための基盤情報を取得する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度未使用額については、平成23年度中に納品し、支払いが次年度になった大型遠心機用ローター『Hitachi R10A3』の支払いに使用する。
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