研究課題
本研究ではタンパク質性リガンドに由来するペプチド断片を抗体可変領域の相補性決定領域(CDR)に対して導入することにより、アンタゴニストまたはアゴニスト抗体を高効率に作製する手法の確立を目指している。前年度に上皮増殖因子(EGF)とEGF受容体(EGFR)の構造情報を基に、ヒト抗体のCDRにEGF由来ペプチド断片を挿入したペプチド断片移植抗体を設計し、その哺乳類細胞発現系を構築した。作製したペプチド断片移植抗体について抗原陽性細胞に対する結合は観測できなかった。この原因として、(1)導入したEGF断片においてEGFRとの相互作用界面が分子表面に十分露出していない、もしくは(2)EGFの断片化によって結合活性が著しく低下した可能性を考えた。そこで本年度は数種のペプチド断片移植抗体変異体を作製し、それらの機能を評価した。具体的には、導入したEGF断片の根元にあたる領域に対して柔軟性の高いスペーサー配列を挿入した変異体を複数種設計し、それらを哺乳類細胞発現系により作製した。フローサイトメトリーを用いて抗原陽性細胞に対する結合活性を評価した結果、優位なピークシフトを観測できなかった。柔軟性の高い配列を導入したため、結合に伴うエントロピー損失が大きくなり、結果として結合親和性の向上に繋がらなかったと考えている。本研究期間中に達成できなかったが、構築した哺乳類細胞発現系を利用することによって、ペプチド断片移植抗体の選択系構築に向けた展開が期待される。
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