研究課題/領域番号 |
23790140
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大多和 正樹 北里大学, 薬学部, 助教 (70453503)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 構造活性相関 / 天然有機化合物 / complex II |
研究概要 |
近年薬物耐性種の出現などの問題から、新たな作用機序を有する抗寄生虫薬の開発は急務である。そこで新たな標的としてcomplex IIが注目されており、complex II阻害剤が新たな抗寄生虫薬として期待されている。Atpenin A5はcomplex IIを強力に阻害する数少ない天然有機化合物であり、atpenin A5をリード化合物とした創薬研究ならびにatpenin A5を用いたcomplex IIの生化学的研究の継続が強く望まれている。そこで申請者は、達成したatpenin A5の全合成経路を利用し、寄生虫選択性向上を目指した誘導体の設計ならびに合成を順次行い、最終的に従来とは異なる作用機序を有する新規抗寄生虫薬の創製を目指す。(1)過去に合成した2 位にアミノ基を有するatpenin A5 誘導体が弱いながらも天然物と比較し寄生虫選択性が向上したこと、更に(2)公開されているcomplex II の構造よりatpenin A5 の結合部位の2 位付近にポケットが存在していることから、atpenin A5 の2 位を足がかりとし、寄生虫選択性向上を目指した構造活性相関を行った。現在2位を立体的に性質の異なるイソプロピルオキシ基ならびにシクロへキシルオキシ基等を導入した誘導体群の合成を達成しており、その活性を測定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Atpenin A5の2位をした誘導体群の合成は、その全合成経路を応用することで順調に達成している。従って誘導体の合成という点においては順調に進展しているといえる。しかし全合成経路の都合上、2-位への置換基の導入は合成の初期段階である。本研究において今後更なる多様な誘導体合成を目的としていることから、より効率的な合成経路の開発が望まれる。すなわち2-位への置換基を合成の後半に導入することで、共通の中間体を用いた合理的な誘導体合成が可能となる。現在はこの新たな合成経路の構築を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
近年農薬として用いられているfultolanil 及びcarboxin はatpenin A5 と比べその活性は低いものの寄生虫complex IIを選択的に阻害することが明らかとなった。Flutoranil 及びcarboxin はアミド結合を介し、2 種の環状構造を有する。これらの大腸菌complex II との結合様式によるといずれもatpenin A5 と同様に基質となるubiquinone 結合部位に結合し、trifluorophenyl 基および2,3-dihydro-1,4-oxathiine 基がquinone 部に相当することが分かっている。また両者ともphenyl 基及びisopropoxyphenyl 基という類似の置換基を有しており、この部位が寄生虫選択性に関与する可能性が考えられる。即ちこの部位はatpenin A5 の側鎖部に相当することから、側鎖部については大幅な構造の変換を行うことによって選択性が向上できるのではないかと予想した。従ってこの置換phenyl 基に相当する置換基をatpenin A5 に導入した誘導体は寄生虫選択性発現が期待できるため、対応する種々の側鎖を有す誘導体を設計した。これらの誘導体群を合成した後、迅速に活性を評価し、class I 誘導体と同様にその結果を更なるclass II 誘導体の設計へフィードバックを行い、同様に合成/活性評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬・器具等消耗品2,000千円。旅費300千円。謝金等50千円。その他50千円。計1,900千円。
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