研究課題/領域番号 |
23790141
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
窪田 豊 昭和大学, 薬学部, 助教 (50365714)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 核酸誘導体 / 抗ウイルス化合物 / 抗腫瘍化合物 |
研究概要 |
本研究では糖部4'位に置換基を有するコルジセピン誘導体の合成法の開発とその生物活性評価を目的とした。当初予定していた平成23年度の研究計画通り、3'、4'-不飽和アデノシン誘導体に対するN-ヨードコハク酸イミドの存在下、チオフェノールによる求電子付加反応を検討した。反応条件の最適化にあたり、反応溶媒、反応温度及び試薬の当量数の検討を行った。その結果、良好な収率で付加体である4'-ベンゼンスルフェニル体を得ることができた。また、その反応機構を検討した。アデノシン誘導体の代わりにTHFを基質に用いると開環反応が起こった4-ヨードブタノールが生成したことから、本反応の実質的な活性種はヨウ化水素であることが示唆された。また、重水素化したチオフェノールを用いる条件に付すことで、本求電子付加反応の立体化学を解明することができた。引き続き、得られた4'-ベンゼンスルフェニル体の官能基変換を検討した。基質に4'-ベンゼンスルフェニル体を用い、N-ブロモコハク酸イミドの存在下、各種アルコールを反応させた。その結果、高収率で対応する4'-アルコシキ体を得ることができた。また、アルコールの代わりにジエチルアミノスルファトリフルオリドを求核試薬に用いることで、4'位にフッ素原子を有するコルジセピン誘導体を合成することができた。炭素官能基の導入に関しては、ラジカル条件下、有機スズ化合物による置換反応を用いることで達成した。次に、ベンゼンスルフェニル基の酸化反応を検討した。m-クロロ過安息香酸によるスルフォキシドへの酸化は、生成物が不安定であり単離精製に至らなかった。一方、スルホンへの酸化は高収率で調製することができた。得られたスルホンに対する有機アルミニウム試薬による求核置換反応は現在検討中である。一部ではあるが、得られた4'位置換コルジセピンを脱保護することで、表題化合物に変換することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた求電子付加反応の最適化及び反応機構の検討は順調に進展した。すなわち、THFを基質に用いた実験における反応活性種の同定、及び重チオフェノールを用いた詳細な立体化学の実験で、申請者が立てた仮説が速やかに証明できたことから、時期早々に官能基変換の検討に移行できた。官能基変換においては、4'-フェニルスルファニル体に対するNBS存在下の求核置換反応の検討が終了した。求核試薬としてアルコールを用いることで、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基などの直鎖状のアルコキシ基のみならず、イソブトキシ基やtert-ブトキシ基などの分岐鎖アルコキシ基を導入することができた。更に、ジエチルアミノスルファトリフルオリドを求核試薬に用いることで、4'位にフッ素原子を導入することができた。加えて、ラジカル条件によるアリル基やシアノエチル基などの炭素官能基の導入も良好な結果を残すことができた。現在、酸化成績体であるベンゼンスルホニル体に対する有機アルミニウム試薬を用いる求核置換反応を検討している。以上のように、平成24年度で計画していた4'位置換コルジセピンの合成研究に既に着手できていることから、本研究全体の進展は良好であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画に従い、様々な4'位置換コルジセピンの合成検討を行う。現在、4'-スルホニル体に対する有機アルミニウム試薬による求核置換反応を検討中であり、これによりメチル基、エチル基、イソブチル基などのアルキル鎖のみならず、エチニル基、シアノ基などの炭素官能基を導入することが可能である。また、アジド基などの窒素官能基を導入予定である。有機アルミニウム試薬以外のルイス酸を用いる官能基変換も検討する。また、合成した4'-アルコキシ体、フッ素体、ベンゼンスルフェニル体、ベンゼンスルホニル体、アルキル体などのコルジセピン誘導体の大量合成を行う。引き続く脱保護により表題化合物を得ることを計画している。最終化合物の生物活性評価に関して、抗ウイルス活性を測定する。抗HIV活性は鹿児島大学及びイェール大学に、抗HCV活性は岡山大学に協力を要請している。その他のウイルスに関してはベルギーのRega研究所に評価協力を依頼する予定である。得られた全ての結果をまとめて、学術雑誌に投稿及び学会等において発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在検討を継続している、有機アルミニウム試薬による炭素官能基の導入の際に、種々の市販アルミニウム試剤を購入する必要となる。具体例として、塩化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム及び二塩化エチルアルミニウム等が挙げられる。これに加え、アジ化ナトリウムや塩化エチニルマグネシウムなども試薬調製に必要となる。試薬の調製の際には高度に脱水された有機溶媒が必要となる。多くの新規表題化合物の生物活性評価を行うために、その大量合成が必要になる。その際に原料となるアデノシン、官能基の保護に用いるシリル化剤やアシル化剤、N-ハロコハク酸イミドやチオフェノールを購入する。脱保護においては、トリエチルアミンやトリブチルアンモニウムフルオリドなどを用い、それに伴う有機溶媒を購入する。分離精製にはシリカゲルカラムを用いる。適宜、高速液体クロマトグラフィーを用いることで高度に精製する。研究結果を学術学会にて参加・発表するための旅費として使用する。また、学術雑誌に投稿・掲載のために必要な費用として使用する。
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