研究課題/領域番号 |
23790142
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
薬師寺 文華 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (40548476)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ミキソピロニン / ホロマイシン / ハイブリッド / 抗菌活性剤 / RNA ポリメラーゼ |
研究概要 |
平成23年度は、チオマリノール誘導体の分子設計及び合成を行い、化合物ライブラリーの構築を試みた。即ち、申請者が以前開発した全合成ルートをもとに誘導可能である合成中間体を用いてホロチン部とのハイブリッド型化合物を設計・合成し、誘導体群の構築を行った。また、細菌性 RNA ポリメラーゼ阻害剤であるミキソピロニンの化合物ライブラリーを構築すべく、ミキソピロニンと RNA ポリメラーゼとの共結晶による X 線構造解析をもとに、以下2種のアプローチによるハイブリッド型分子設計を計画した。1) ミキソピロニン右翼カーバメート部位が関与する水分子を介したタンパク部位との水素結合を基に、右側鎖末端にホロチン部を導入し、相互作用を見出す。2) ミキソピロニン左翼 C20 位炭素鎖方向に広がる空間を基に、左側鎖末端にホロチン部を導入し、蝶番部位との相互作用を見出す。上記計画に基づき合成研究を行った結果、現在 14 種のハイブリッド型化合物を合成することができた。本化合物群を枯草菌を用いたペーパーディスク法による抗菌活性試験に付したところ、左側鎖にホロチン部を有するハイブリッド型分子に関して阻止円が観察され、抗菌活性を有することが明らかとなった。また、グラム陽性菌、陰性菌、真菌を用いて最小発育阻止濃度を測定したところ、グラム陽性菌である M. luteus に対し、特に強い活性を示すことを明らかにした。さらに、E. coli の細菌性 RNA ポリメラーゼを用いた in vitro での阻害活性試験において、阻害作用を有することを確認することができた。以上、自身で設計、合成したハイブリッド型化合物が所望の活性を示した点は特筆すべきであり、更なる構造活性相関研究を展開する上で、大変重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、ハイブリッド型天然物であるチオマリノールをリード化合物としたハイブリッド型誘導体の分子設計及び合成を行い、化合物ライブラリーの構築を試みた。現在、数種のハイブリッド型化合物を合成しているが、活性試験の実施には至っていない。これより、次年度は、活性試験を随時試みる予定である。また、細菌性 RNA ポリメラーゼ阻害剤であるミキソピロニンの化合物ライブラリーの構築は、ほぼ順調に進行し、 14 種のハイブリッド型化合物の合成を達成することができた。さらに、本化合物群に対し、枯草菌を用いたペーパーディスク法による抗菌活性定性試験、グラム陽性菌、陰性菌、真菌を用いた最小発育阻止濃度測定、また、細菌性 RNA ポリメラーゼに対して阻害活性試験を実施することができ、本研究の一連の流れを構築することができた。以上より、平成23年度は、おおむね順調に研究を進めることができたと考えており、次年度以降の研究計画に、順次着手していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に合成したチオマリノールのハイブリッド型誘導体を用いた抗菌活性試験の実施を試みる予定である。また、平成24年度は、同様に RNA ポリメラーゼ阻害剤であるリポスタチンとホロチン部のハイブリッド型誘導体設計及び合成に着手する。リポスタチンは、2012 年 4 月に全合成が報告された化合物であるが、独自の合成ルートに基づく誘導体合成へと展開すべく、以下のような合成計画を立てた。即ち、アリルアルコールを Sharpless 不斉エポキシ化反応に付すことでエポキシアルコールとした後、分子内ホーナーエモンズ反応の基質へと導く。続いて別途合成した側鎖カルボン酸とエステル化反応を行った後、分子内ホーナーエモンズ反応により、マクロラクトン部を構築し、リポスタチン骨格を得る予定である。リポスタチンは、skipped polyene 部位を含むマクロラクトン環を有することから、その生理活性に加え、合成化学的にも興味深い化合物である。これより、まず、リポスタチンの全合成ルートの確立を目指すとともに、合成中間体とホロチン分子とのハイブリッド型誘導体群の構築を試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費であるが、活性試験効率向上のため、設備、部品として抗菌活性試験用インキュベーターの導入を計画している。また、有機・無機試薬、有機溶媒、ガラス器具は、合成研究に不可欠であり消耗品として計上している。さらに、学会参加による国内、海外旅費は、貴重な情報や研究資料として還元することで、研究の飛躍的展開につなげることができると考え、使用を計画している。また、研究打合わせや、学会発表では種々の書類及び資料作成のため複写費や通信費等の計上が必至である。論文投稿に関しても、英文校閲費、論文投稿費が必要であるため、研究費からの計上を計画している。以上より、使用を計画している研究経費はいずれも必要性が高く、研究計画の推進には欠かせない妥当なものとなっている。
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