研究課題/領域番号 |
23790148
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田代 卓哉 独立行政法人理化学研究所, 免疫制御研究グループ, 研究員 (20339104)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | KRN7000 / GalCer / サイトカイン |
研究概要 |
KRN7000は、マウスおよびヒトの系で、免疫細胞の一種であるナチュラルキラー(NK) T 細胞を活性化して強力な抗腫瘍活性を誘導するスフィンゴ糖脂質である。NK細胞はNKT細胞以上に体内に存在しており、抗腫瘍活性サイトカインであるインターフェロン(IFN)-γを多量に産生する能力を有していることから、NKT細胞の活性化を介してNK細胞を活性化できる糖脂質は、非常に有効な抗癌剤となりうる。しかし、ヒトの系においてそのような活性を有する糖脂質は未だ開発されていない。研究代表者らは、糖脂質KRN7000のガラクトース部分をカルバガラクトースへと変換した類縁体RCAI-56が、mouse in vivoのみならずヒトの系においても強力にIFN-γの産生を誘導することができることを明らかにしている。研究代表者らはさらに、KRN7000のガラクトースの6-位水酸基を修飾すると活性が増強すること、RCAI-56のカルバ糖部分における6-位水酸基もまた修飾可能であることを見出している。従って、ヒトでの臨床応用を視野に入れ、RCAI-56の構造活性相関研究を行って新規な抗癌剤候補化合物の探索研究を行う。具体的には、RCAI-56の6-位水酸基に対して官能基修飾を行うことによって、さらに強力な抗腫瘍活性化合物を開発することを目的とする。カルバ糖の合成は容易ではないことから、平成23年度は6-位水酸基を修飾する際の候補官能基を検討した。工業化を視野に入れ、合成が容易なアルキル基、およびカルバメート基を有する類縁体を合成し、その活性を評価したところ、mouse in vivoでTh-1型側に偏ったサイトカインの産生を誘導した。さらにはDC-パルスによる投与を行ったところ、KRN7000よりもはるかに多量のIFN-γの産生が誘導されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規化合物の創製研究は、当初の計画通りに進めることができている。一方でスフィンゴ糖脂質の合成において、これまで知られている種々のガラクトシル化の方法よりも、より高収率、かつ簡便に調製する反応条件を見出すことに成功した。合成した糖脂質の活性試験を行った結果、予期した通りKRN7000のガラクトース部分の6-位水酸基の修飾が活性の増強に有効であった。それに加え、これまであまり実施されていなかったDC-パルスによる投与方法が非常に有効であるという結果を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
X線結晶構造解析の結果より、ヒト抗原提示蛋白質CD1dのTrp153が糖脂質KRN7000のガラクトース6-位水酸基の近傍に配置されていることが明らかとなっている。そこで、π-πスタッキング相互作用による糖脂質と抗原提示蛋白質との親和性の向上を期待し、芳香環を有する類縁体の開発へと発展させる。抗腫瘍活性の指標となるIFN-γを多量に産生誘導する類縁体数種類を選定した後、human in vitroの系における活性の調査も行いたい。そして、最適化した官能基をRCAI-56に導入し、有効な抗癌剤候補化合物となり得るか評価する。また、DC-パルスでの投与方法の更なる検討も併せて行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
高効率かつ簡便に行うことのできるガラクトシル化反応の条件を見出したことで、合成中間体の調製にかかる試薬購入費を低く抑えることができた。研究費は主に実験用試薬ならびにガラス器具等、研究の遂行にかかる消耗品の購入費用に充てる予定であり、繰り越すことのできた経費を活用し、当初の予定以上に化合物の展開を行うべく、合成方法の検討を行いたい。
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