研究課題/領域番号 |
23790155
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 哲史 北里大学, 薬学部, 助教 (40449004)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | MALTリンパ腫 / H. heilmannii |
研究概要 |
本研究では、H. heilmannii感染による胃粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫発症の分子機構、および本病態におけるインターロイキン-10(IL-10)の役割を明らかとすることを目的とし、H. heilmannii感染野生型およびIL-10ノックアウト(KO)マウスの胃粘膜における遺伝子発現について、マイクロアレイを用いた網羅的解析を行った。マイクロアレイにより発現変動の認められた遺伝子についてKEGGのパスウェイを行った結果、H. heilmannii感染野生型マウスの胃粘膜において、B細胞活性化経路である"Intestinal immune network for IgA production" パスウェイの活性化が認められた。定量的RT-PCR解析の結果、H. heilmannii感染マウスの胃粘膜において、上記パスウェイの上流に位置するCD86、CD28、およびこれらの下流に位置するTNF受容体スーパーファミリー遺伝子(TACI, BCMAおよびBAFFR)の有意な発現増加が認められた。また、IL-10-KOマウスでは、H. heilmannii感染による病態形成の抑制と伴に、H. heilmannii感染野生型マウスで発現上昇の認められた上記パスウェイ中の多くの遺伝子において、感染による遺伝子発現上昇の有意な抑制が認められた。すなわち、本研究により、H. heilmannii感染による胃MALTリンパ腫発症の原因として本パスウェイの活性化が示唆され、これらパスウェイの活性化にIL-10が重要な役割を果たしている事が明らかとなった。本研究成果について、現在、学術論文への投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析は、当初の計画よりも順調に進んでいる。また、IL-10-KOマウスを用いた解析は、マウスの発育不良により、当初の計画より、若干遅れている。総合的には当初の計画通りに順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によりH. heilmannii感染により発現上昇の認められたCD86やCD28の発現細胞の同定は、慢性炎症から惹起される類似の病態の発症機構の解明の糸口に成り得る可能性があるものと考えられる。そのため、今後、フローサイトメーターを用いて、CD86、CD28の発現細胞の同定を行う。また、本病態発症におけるIL-10の役割について更なる詳細な解析を行うために、IL-10-KOマウスに野生型マウスから分離したT細胞やB細胞を移植し、H. heilmanniiを感染させ、病態発症のの有無を検討する。また、本病態に対する除菌療法の効果について、詳細な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画通りに使用する予定である。
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