研究課題
本研究では、H. heilmannii感染による胃粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫発症の分子機構の役割を明らかとすることを目的とし、H. heilmannii感染マウスの胃粘膜における遺伝子発現について、マイクロアレイを用いた網羅的解析を行った。マイクロアレイにより発現変動の認められた遺伝子についてKEGGのパスウェイを行った結果、H. heilmannii感染野生型マウスの胃粘膜において、CD86およびCD28を最上流とするB細胞活性化シグナル遺伝子の発現上昇が認められた。さらに、本菌感染マウスに対し、アモキシシリン(15 mg/Kg)、クラリスロマイシン(50 mg/Kg)、ランソプラゾール(50 mg/Kg)を1日2回、7日間経口投与し、最終投与1ヶ月後のマウス胃粘膜について、組織学的解析および宿主遺伝子発現解析を行った。その結果、除菌処置マウスにおける菌の消失、ならびに胃MALTリンパ腫を形成するB細胞の減少も認められた。さらにこれら除菌処置マウスでは、菌感染により誘導されるCD86およびCD28の遺伝子発現誘導が、有意に抑制されていた。H. heilmannii感染野生型マウスの胃粘膜中のリンパ球について、フローサイトメトリー解析を行った結果、菌感染により誘導されるCD86の発現は、B細胞と共にT細胞においても認められた。CD86陽性T細胞について更に解析した結果、これら細胞の多くがCD86シグナル抑制系のCD152に対して陰性を示した。本研究によりH. heilmannii感染胃粘膜では、CD86を上流とする遺伝子シグナルが抗原依存的に異常活性化され、これら強固な炎症反応により胃MALTリンパ腫の病態が形成されることが示唆された。また、本病態に対する除菌療法の有用性が示唆された。
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