ピロリ菌の代表的な抗酸化能力である鉄イオン共役型Superoxide Dismutase(SodB)は胃粘膜上皮への持続感染の樹立に必須な遺伝子であり、さらに、SodBの強発現はメトロニダゾール耐性化をもたらすことを研究代表者らは明らかとしてきた。本研究課題では、ピロリ菌の持続感染能の喪失と同時に、メトロニダゾール耐性解除をもたらす新規除菌治療戦略の基盤構築を目的に、鉄トランスポーターのSodB発現機序への関与に注目して、ピロリ菌の抗酸化能発現システムを明確化することを目的とした。本研究により、ピロリ菌の抗酸化能力である鉄イオン共役型Superoxide Dismutase(SodB)の機能維持には、外界鉄イオン取り込みトランスポーターであるFecA1遺伝子が必須であることを分子生物学的手法により明確にすることが出来た。さらに、fecA1遺伝子欠損ピロリ菌株の構築及び利用によって、FecA1が、メトロニダゾール耐性化に寄与し、また、胃粘膜上皮への持続感染の成立にも寄与する事をスナネズミを用いた感染実験で明確にした。つまり、ピロリ菌体外膜上に存在する鉄トランスポーターFecA1が、ピロリ菌の慢性感染樹立の抑制、さらには、メトロニダゾール感受性亢進化を目的とした新規ターゲット分子となり得ることを細菌学的手法により明確にした。今後、FecA1機能阻害分子について、機能阻害活性を示す低分子化合物の探索・同定を行い、同定分子の機能阻害化合物の効果をin vitro及びin vivoで評価することで、ピロリ菌全除菌時代がもたらすピロリ菌多剤耐性菌株の増加懸念に対する対抗策の構築に寄与すると期待される。
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