予備的検討において、肝臓特異的AhR欠損(L-AhR KO)マウスにおける摂餌量の減少、エネルギー消費量の増加および熱産生量の増加がL-AhR KOマウスの体重増加率の抑制を招くことを示した。また、その分子メカニズムとして血中レプチン量の増加に伴うインスリン感受性の増加を示した。そこで本研究では、肝臓AhRが遠隔に位置する脂肪組織由来の摂食ホルモンであるレプチン量の制御を介した全身エネルギー代謝機構を検討した。 平成23年度には、肝臓AhRによる脂肪組織のレプチン発現調節の分子メカニズムとして液性因子を介してを明らかにした。また、L-AhR KOマウスにおける血中レプチン量の増加は視床下部におけるSTAT3の活性化を介して摂食量の減少を引き起こすことを明らかにした。平成24年度において、レプチン作用が消失したOb/Obマウスを用いてレプチン依存性を検討したところ、L-AhR KO/Ob/Obマウスにおいて観察されたインスリン感受性および体重増加率の抑制は消失した。平成25年度において、高脂肪食負荷した肥満モデルマウスについて検討を行ったところ、体重量および血中レプチン量はL-AhR KOマウスとコントロールマウスの間に違いは認められなかった。肝臓AhRに制御を受ける液性因子は食餌に由来する可能性が示唆されたことより、現在、その詳細な解析を行っている。以上の結果より、肝臓AhR制御を受ける液性因子を介したレプチン発現調節による通常食飼育下における全身エネルギー代謝制御に関与していることを明らかにした。
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