今年度は「医薬品汚染軽減策の検討」及び「医療関係者に対する医薬品被曝意識調査」について実施したので報告する。 前年度に実施した「実験室での医薬品の大気中飛散モデル実験」において、錠剤粉砕による大気中粉じん濃度の上昇が確認できた。そこでモデル実験の延長として、医薬品粉じんによる汚染を軽減する対策についての検討を行った。今回は、1、換気の有無 2、湿度の差 3、マスク着用の有無 に焦点を当て、大気中の粉じん濃度に変化が見られるか調査した。ドラフト内のファン(薬局での換気扇や空気清浄機に相当)使用の有無による比較では、ファンを使用した場合は使用しなかった場合に比べて飛散粉じん量が有意に抑えられた(P値<0.05)。また、湿度50%と80%の場合の比較では、湿度80%において有意に飛散粉じん量が抑えられた(P値<0.05)。次に、マスク着用の有無による比較では、マスクを着用することで有意に吸引粉じん量が抑えられた(P値<0.05) 。 続いて、「医療関係者に対する医薬品被曝意識調査」として、県薬剤師会主催の勉強会に出席した薬剤師117名を対象にアンケート調査を実施し、92名から回答を得た(回収率78.6%)。医薬品による曝露について散剤調剤で65.6%、錠剤粉砕で60.5%の人が「感じる」と答えた。曝露の形態としては、「味を感じる」が散剤調剤で50.6%,錠剤粉砕で41.8%(以下同順)、「鼻腔に異物感を感じる」が48.8%,50.7%、「手等にざらつきを感じる」が83.5%,60.6% 等があった。 研究期間全体を通じて、調剤時に医薬品粉じんが大気中に飛散していること、それによる曝露が室内の換気や加湿器の使用、マスク着用によって軽減できることが示唆された。また、薬剤師の中には医薬品曝露を意識している人も少なくないことから、今後医薬品汚染を軽減するための対策が必須になると考えられる。
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