研究課題/領域番号 |
23790167
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
小林 弥生 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (00391102)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヒ素 / 腸内細菌 / 代謝 / HPLC-ICP-MS / LC-MS |
研究概要 |
中国、インド、バングラディッシュなどにおいて、高濃度のヒ素が地下水に混入し、それを生活用水として利用している住民に深刻な被害を与えているが、その毒性発現機構は未だに明らかにされていない。腸内細菌叢は、宿主の老化、アレルギー、免疫、感染や発癌に密接に関連していると言われていることから、哺乳類におけるヒ素化合物の代謝を考える際に、腸内細菌による代謝も考慮に入れる必要がある。本研究では、腸内細菌によるヒ素の代謝を化学形態別分析によって明らかにし、ヒ素化合物の吸収および排泄に関する腸内細菌の役割について明らかにすることを目的としている。 精製食で成育したラットに抗生物質を処理し、腸内細菌を低下させたラットと無処理ラットに対してジメチルアルシン酸を50mg/kg b.w.の用量で経口投与し、ヒ素の分布と化学形態別分析を行った。試料中の総ヒ素濃度は、試料を硝酸と過酸化水素で湿式灰化した後、ICP-MSで測定した。ヒ素の化学形態別分析は、陽イオン交換カラムを装着したHPLC-ICP-MS法およびLC-MSにて行った。全血、血漿、肝臓でのヒ素蓄積は抗生物質群が対照群より低い傾向にあり、肝臓では有意差がみられた。尿および糞中へのヒ素の排泄は、3日目の糞中排泄が抗生物質群が有意に高かった事を除いて、ほぼ同様だった。尿および糞抽出液のヒ素化学形態別分析の結果から、抗生物質群において、含硫ヒ素化合物の生成が有意に低下していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画当初は、動物実験で5匹ずつのラットを用いる予定だったが、麻酔中での死亡などにより、再実験が必要となった。年度の途中から、海外派遣制度を利用し海外留学していたため、再実験することが出来ず、進行状況は「(3)やや遅れている」状態である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 抗生物質処理ラットにおけるヒ素の体内動態を明らかにする23年度の動物実験の問題を解決し、再実験を行う。2. 腸内細菌による各種ヒ素化合物の代謝の差異 ヒ素-グルタチオン(As-GSH)抱合体と無機ヒ素化合物、あるいはメチルヒ素化合物と腸内容物との反応性と反応生成物を比較する。また、腸内細菌によるヒ素化合物の代謝に関するGSHやシステインの影響も調べる。腸内細菌のターゲットヒ素化合物を検索することによって得られた結果から、ヒ素の代謝機構を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒ素の化学形態別分析にはLC-MSが不可欠である。24年度は装置のオーバーホールの時期となる為、研究費の大半をこのオーバーホール費用として使用する計画である。
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