研究課題/領域番号 |
23790167
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
小林 弥生 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (00391102)
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キーワード | ヒ素 / 腸内細菌 / 代謝 / HPLC-ICP-MS / LC-MS |
研究概要 |
中国、インド、バングラディッシュなどにおいて、高濃度のヒ素が地下水に混入し、それを生活用水として利用している住民に深刻な被害を与えているが、その毒性発現機構は未だに明らかにされていない。腸内細菌叢は、宿主の老化、アレルギー、免疫、感染や発癌に密接に関連していると言われていることから、哺乳類におけるヒ素化合物の代謝を考える際に、腸内細菌による代謝も考慮に入れる必要がある。本研究では、腸内細菌によるヒ素の代謝を化学形態別分析によって明らかにし、ヒ素化合物の吸収および排泄に関する腸内細菌の役割について明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、平成23年度の動物実験の再実験、腸内細菌によるヒ素の代謝等の実験を行い、その成果を日本薬学会年会において発表する予定であったが、平成23年8月より、課題応募時には予定していなかった海外留学(留学先:イギリス、アバディーン大学)を行うこととなり、留学前の事前調整では実施可能であった動物実験全般が大学側の都合により実施出来なくなったため、計画を変更し、留学中はヒ素化合物とヒ素代謝物の一斉分析法の開発を実施した。 腸内細菌によるヒ素の代謝を考察する上で、食物に含まれる有機ヒ素化合物の代謝を明らかにすることも重要であるため、有機ヒ素化合物の代謝に関する研究を行った。魚介類に多く含まれるアルセノベタインは、体内代謝を受けることなくそのまま排泄されることが知られているが、アルセノベタインを経口投与したラットの尿中ヒ素の化学形態別分析を行った結果、ヒ素化合物の酸素が硫黄に置き換わった含硫ヒ素化合物が検出された。このことから、アルセノベタインの一部は、腸内細菌によって代謝される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究概要実績にも記載したように、平成24年度は、平成23年度の動物実験の再実験、腸内細菌によるヒ素の代謝等の実験を行い、その成果を日本薬学会年会において発表する予定であったが、平成23年8月より、課題応募時には予定していなかった海外留学(留学先:イギリス、アバディーン大学)を行うこととなり、留学前の事前調整では実施可能であった動物実験全般が大学側の都合により実施出来なくなったため、計画を変更し、留学中はヒ素化合物とヒ素代謝物の一斉分析法の開発を実施した。このため、期間を1年間延長し、腸内細菌によるヒ素の代謝等の実験と成果発表を次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
1. 抗生物質処理ラットにおけるヒ素の体内動態を明らかにする 23年度の動物実験の問題を解決し、再実験を行う。 2. 腸内細菌による各種ヒ素化合物の代謝の差異 各種ヒ素化合物と腸内容物との反応性と反応生成物を比較する。また、腸内細菌によるヒ素化合物の代謝に関するGSHやシステインの影響も調べる。腸内細菌のターゲットヒ素化合物を検索することによって得られた結果から、ヒ素の代謝機構を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の未使用額は実験に必要な消耗品(実験動物、ガラス・プラスチック器具、カラム等)と成果発表の経費に充てる。
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