研究課題/領域番号 |
23790170
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 康雄 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70583590)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 病態血液脳関門 / P糖タンパク / 定量プロテオミクス / 単分子輸送活性 / 絶対発現量 / Pharmacoproteomics |
研究概要 |
本研究では、P-gp安定発現細胞を用いた経細胞輸送解析とP-gp絶対発現量解析から求めた正常時のP-gpの単分子輸送活性に、てんかんモデルマウスにおける脳毛細血管のP-gp絶対発現量を乗ずることによって、てんかんの脳関門のP-gp輸送活性を再構築できるか否かを解明することを目的とした。 成果1.てんかんモデルマウスである ELマウス及びペンチレンテトラゾール(PTZ)誘発てんかんマウスから脳毛細血管を単離し、LC-MS/MSを用いた膜タンパク質絶対定量法によってP-gpの絶対発現量を測定した。正常マウスと比べて、有意に、P-gpのタンパク質発現量の増加が認められた。成果2.マウスP-gp(mdr1a)発現LLC-PK1細胞および親株LLC-PK1細胞のそれぞれの単層膜において、P-gp基質であるverapamilのApical-to-Basal輸送速度に対するBasal-to-Apical輸送速度の比率を計測し、発現細胞のその比率を親株の比率で除することによってP-gpの輸送活性を求めた。これをP-gpの絶対発現量で除することで、verapamilの輸送に対するP-gpの単分子輸送活性を明らかにした。成果3.上記で解明された、てんかんモデルマウスの脳毛細血管におけるP-gpのタンパク質発現量および単分子輸送活性を統合することによって、脳関門のP-gp輸送活性を再構築した。この再構築された活性に、受動拡散による平衡状態を反映する血漿中と脳内の蛋白質非結合型分率(verapamil)の比率を統合することによって、verapamilの脳内対血漿中濃度比(Kp brain)を再構築した。定速静脈内投与法によって計測されたてんかんモデルマウスにおけるKp brainの実測値とほぼ一致した。 従って、てんかんにおける血液脳関門のP-gp輸送活性を再構築できることが実験的に証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、平成23年度いっぱいで実施予定であった「てんかんモデルマウスの血液脳関門のP-gp輸送活性の再構築」の計画が、平成23年度の早期に完了し、平成23年9月にトルコのイスタンブールにおいて開催された国際学会「14th Symposium on Signal Transduction in the Blood Brain Barrier」でその成果を発表することができた。以上のことから、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に、交付申請書に記載したとおりに推進する予定である。 平成24年度は、炎症モデルマウスにおける脳関門P-gp輸送活性を再構築できるか否かを解明する。Lipopolysaccharide(LPS)などの炎症関連物質をマウスに投与することによって、炎症モデルマウスを作製し、脳毛細血管を単離してLC-MS/MSを用いてP-gpの絶対発現量を計測し、炎症に伴うP-gpのタンパク質発現量の変化を解明する。このP-gpのタンパク質発現量に、炎症モデルマウスにおける蛋白質非結合型分率および平成23年度の研究で解明される正常時の単分子輸送活性を統合することによってP-gp基質のKp brainを再構築し、定速静脈内投与法によって計測された炎症モデルマウスにおけるKp brainの実測値と一致するか否かを明らかにする。 再構築できない場合、正常時と炎症時の単分子輸送活性が異なることを意味する。Caveolin-1のリン酸化量がP-gpの単分子輸送活性に影響を与える可能性が示唆されている。従って、先ず、Caveolin-1のリン酸化量が確かに単分子輸送活性に影響を与えることを明らかにし、次に、 炎症時のCaveolin-1のリン酸化量に基づいてP-gpの単分子輸送活性を再構築する方法論を確立する必要がある。そこで、平成24年度は先ず、 LC-MS/MSおよびリン酸化精製法を用いて、Caveolin-1のTyr6, Tyr14, Tyr25, Tyr42のリン酸化定量系を確立する。 平成25年度は、リン酸化Caveolin-1によるP-gpの単分子活性変動機構に基づいて、炎症モデルマウスにおける脳関門P-gp輸送活性を再構築できるか否かを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度と同様に、平成24年度中に特に変更がなければ、研究遂行のために、交付額が年度末に0になるように計画的に使用する予定である。
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