研究課題/領域番号 |
23790172
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関根 秀一 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70401007)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
申請者は急性の酸化ストレス時に胆汁排泄輸送体の局在変化による機能低下を伴う肝内性胆汁うっ滞を明らかとし、そのメカニズムを解明してきた。一方でC型肝炎などの慢性肝疾患時にも胆汁排泄輸送体の膜局在性の低下による胆汁うっ滞が報告されている。これら 胆汁うっ滞は胆汁酸等の蓄積により肝硬変や肝癌への病態の悪化を招く。そこで本研究では、これまでに明らかとしたMRP2の局在性を上昇させるシグナル伝達の関連因子についてEthan DIGEを用いた2次元蛍光ディファレンシャルの解析を行った結果、MRP2と新規に結合する蛋白質としてAnnexinA2を同定した。さらに本蛋白質とMRP2との結合に関してGST-pull down assayにより検討を行ったところ、MRP2の局在の上昇時には、AnnexinA2と結合が減少している一方で、局在の低下時において、結合の増強が認められた。本検討における詳細な解析からAnnexinAが、MRP2を含む膜蛋白質の細胞内動態に関わる重要な因子であることを明らかとした。また、MRP2と同様に毛細胆管側膜に発現し胆汁うっ滞の生成に関わるBSEPの機能低下時において、培地中の胆汁酸に依存した毒性感受性の亢進することをヒト、ラット肝細胞Sandwich cultured hepatocyteにおいて見出した。本年度において明らかとしたこれら結果は、胆汁うっ滞の生体への影響を明らかとする本研究において、重要な知見となることが期待され、今後に発展性のある研究結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究計画において本年度は、前年度において見出したAnnexinA2の解析を行い、MRP2の局在性のキーファクターであることを明らかとした。また、BSEPの機能低下が、胆汁酸の毒性感受性の亢進に関わっており、胆汁うっ滞が及ぼす生体への影響についてIn vivoで明らかとすることを目的とした本研究において、次年度につながる研究成果が得られていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度においては、本年度において得られたAnnexinA2についてIn vivo、In vitroでその遺伝子発現を抑制するためアデノウイルスノックダウンベクターの構築を行う。構築されたベクターにおいて、MRP2、BSEPの機能変動と、肝臓における生体内基質の蓄積について併せて評価を行うことで、胆汁うっ滞の生体への影響と、効果的な利胆作用を持つ化合物の選択を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
アデノウイルスの構築にあたり必要な研究試薬(TAKARA adeno virus knockdown vetor)を研究の効率化のためキットとして購入する(25万円)。これは本年度購入を予定していたものであったが、輸入手続きの遅延等により本年度購入ができなかったため、本年度の未使用分の384,685円を充てる。また、ヒト肝スライスは研究のGroningen大学Geny Groothuis教授のグループとの共同研究として実施する。そのサンプルの輸送費として20万円を計上した。また細培養試薬・器具は、培養液、ウシ血清、細胞培養ディッシュを含み、これらは昨年度の消費量を参考に本研究に必要な分を算出した。一般消耗品は、ピペットチップ、遠心管、ガラス器具などを含んでいる。旅費には、本研究の成果をさらに発展させると共に広く認知させるためのオランダで開催される国際薬物動態学会への参加・発表にかかる経費を計上した。
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