申請者は急性の酸化ストレス時に胆汁排泄輸送体の局在変化による機能低下を伴う胆汁うっ滞を明らかとし、そのメカニズムを解明してきた。一方でC型肝炎などの慢性肝炎時にも胆汁排泄輸送体の膜局在性の低下による胆汁うっ滞が報告されている。これら胆汁うっ滞は胆汁酸等の蓄積により肝硬変や肝がんへの病態の悪化を招く。そこで本研究では、これまでに明らかとしたMRP2の局在性の低下を上昇させるシグナル伝達の関連因子についてEthan DIGEを用いた2次元蛍光ディファレンシャル解析を行った結果、MRP2と結合する複数の蛋白質を新規に同定した。その中の一つであるAnnexinA2と結合することでMRP2が内在化することを見出し、LPS投与による胆汁うっ滞モデルにおいてもAnnexinA2とMRP2の結合量の減少が見られ、MRP2の細胞内動態に関わる蛋白質であることが明らかとなった。また、消化管においてもRadixinと同じFamilyに属するEzrinのリン酸化状態の変化により、MRP2やMDR1の管腔側膜での局在性を制御しており、消化管における発現プロファイルの違いを説明しうることが明らかとなった。
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