CYP1A2発現性差を制御する分子メカニズムの解明を目的とし、研究が実施された。平成24年度の研究では、CYP1A2の発現調節を担う転写因子に着目し、前年度の解析からマウスCyp1a2遺伝子5’上流域への結合が明らかとなった転写因子C/EBPαおよびFra1のCYP1A2 発現に与える影響を解析した。その結果、以下の点が分かった。 C/EBPαおよびFra1の過剰発現によりマウス初代培養肝細胞において、CYP1A2 mRNA発現量は減少した。C/EBPαのみの過剰発現では、CYP1A2 mRNAの発現変動が見られなかったことから、C/EBPαとFra1がCyp1a2の発現調節に関わることが考えられた。C/EBPαとFra1を過剰発現させた肝細胞に成長ホルモンを添加すると、CYP1A2 mRNA発現量の減少は見られなくなった。このことから、C/EBPαもしくはFra1の活性が成長ホルモンにより制御されていることが考えられた。また、Cyp1a2遺伝子5’上流域の-4.5 kbpおよび-9.5 kbpを含むレポーターコンストラクトのレポーター活性は、C/EBPαおよびFra1の過剰発現により変動せず、C/EBPαとFra1が作用するCyp1a2遺伝子領域は-9.5 kbpよりさらに上流の領域に存在することが示唆された。これらの結果から、Cyp1a2の発現はC/EBPαとFra1によって負に制御されていること、およびその制御における成長ホルモンの関与が考えられた。
|