本研究では、がん患者におけるプロクロルペラジンの制吐作用および血清プロラクチン濃度に及ぼす影響因子について、ドパミンD2受容体(DRD2)およびオピオイドμ1受容体(OPRM1)の遺伝子変異に着目して評価した。対象はオキシコドン服用時の制吐目的にプロクロルペラジンを投与したがん患者70名とした。プロクロルペラジン服用12時間後における血漿中プロクロルペラジン濃度および血清プロラクチン濃度を評価した。血漿中プロクロルペラジン濃度、オキシコドン投与量、性別およびDRD2の遺伝子変異と嘔気・嘔吐発現率および血清プロラクチン濃度との関係について解析した。プロクロルペラジンの制吐作用に関して、嘔気発現率はDRD2 TaqIA A2A2群と比較して、A1A1+A1A2群で有意に高値を示した。一方で、嘔吐発現率は男性と比較して女性において有意に高値を示した。血清プロラクチン濃度は、血漿中プロクロルペラジン濃度との間に弱い正の相関が認められ、男性と比較して女性において有意に高いことが示された。また、OPRM1 118AG+GG群と比較してAA群では血清プロラクチン濃度が有意に高いことが示された。多変量解析においても、嘔気発現率の影響因子としてDRD2 TaqIAが、嘔吐発現率の影響因子として性別が、血清プロラクチン濃度の影響因子として、性別、血漿中プロクロルペラジン濃度およびOPRM1 A118Gが挙げられた。
|