研究課題
関節リウマチに対して遺伝子と薬物をダブルターゲティングできる新規デリバリーシステムの開発を目的とした。前年度までにpDNA、polyethyleneimine (PEI)、およびメトトレキサート(MTX)を用い、各種成分の混合比と調製プロセスを最適化することで、MTX被膜型複合体(MTX複合体)の構築に成功した。また、MTX複合体はがん細胞や滑膜細胞に対して、高い遺伝子導入効果を示すことを明らかにした。本年度はpDNAからsiRNAへ適応拡大を試みた。モデルとしてホタルルシフェラーゼに対するsiRNAとPEI、MTXを混合し、siRNA-PEI-MTX複合体(MTX複合体)の調製を試みた。様々な混合比と調製プロセスにより構築を試みたが、凝集がみられ、ナノサイズの複合体にすることが困難であった。そこで、関節リウマチに有用な被膜成分として、新たにchondroitin sulfate (CS)に着目し、siRNA-PEI-CS複合体(CS複合体)の構築を試みた。その結果、混合比と調製プロセスを最適化することでCS複合体を作製することに成功した。製剤学的検討により最適化したCS複合体をルシフェラーゼ恒常発現メラノーマ細胞に添加し、遺伝子抑制効果および細胞障害性について検討した。その結果、CS複合体は市販の遺伝子導入試薬であるlipofectamineに匹敵する高い遺伝子抑制効果を示した。また、CS複合体はlipofectamineで認められた細胞毒性を示さなかった。以上のように、我々は本研究によって、MTX被膜型遺伝子ベクターにより関節リウマチ由来の滑膜細胞へ遺伝子導入が可能であることを明らかにした。また、siRNA用の遺伝子ベクターとしてはCS被膜型遺伝子ベクターを構築することができた。これらの結果は、関節リウマチをモデルとした局所型新規遺伝子医薬品の開発に有益な基礎的情報であると考えられる。
すべて 2013
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Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 36 ページ: 995-1001