研究課題/領域番号 |
23790187
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邊 博志 熊本大学, 薬学部, 准教授 (70398220)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 尿毒症物質 / インドキシル硫酸 / 薬物動態制御タンパク質 |
研究概要 |
本研究では、5/6腎臓摘出ラット及びラット由来初代培養肝細胞を用いて、インドキシル硫酸(IS)生合成に及ぼすCKDの影響について検討するとともに、各種尿毒症物質(UT)が肝CYP2E1とSULT1A1の発現に及ぼす効果について検討を加えた。1.CKDラットとして5/6腎臓摘出ラットの肝臓S9画分を用いて、ISの生合成能を評価したところ、CKDラットでは、正常ラットに比べてISの生合成が亢進していた。このことから、CKD時には、ISの生合成が亢進している可能性を見出した。2.CKDラット肝臓では、正常ラット肝臓に比べてCYP2E1及びSULT1A1 発現量がmRNA及びタンパク質レベルで有意に上昇していた。このことからCKDラットにおけるIS合成の亢進はCYP2E1 及びSULT1A1の発現亢進に起因するものと推察された。3.ラット由来初代培養肝細胞に、4種のUT (IS、p-クレジル硫酸(PCS)、3-carboxy-4-methyl-5-propyl-2-furan propionate (CMPF)、intact PTH)を添加し、CYP2E1及びSULT1A1の発現量を定量的RT-PCR法により解析した。その結果、IS、PCS及びCMPF添加群では、添加濃度依存的なCYP2E1及びSULT1A1発現量の上昇が観察された。他方、intact PTHはSULT1A1の発現量を上昇させた。このことからISだけでなく、他のUTもISの産生亢進に関与する新たなUT間相互作用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、ラット由来初代培養肝細胞に加え、CKDラット肝臓を用いた系において、各種UTが薬物動態制御タンパク質の機能調節に関与することを明らかにしたため。今後は、データの再現性を確保する。また、小腸における検討が出来なかったので、次年度引き続き検討する。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に確立した初代培養細胞を用いた系での検討をスピードアップする。【1.前年度研究の続行】【2.CKD患者における臨床薬物動態試験】 平成23年度の結果を踏まえ、CKD患者(ステージ3~5)を対象とした臨床薬物動態試験を行う。具体的には、CKDにおける肝及び小腸の薬物動態制御タンパク質の機能変動が、肝代謝型薬剤であるアトルバスタチン(CYP3A4, OATPsの基質)、ミタゾラム(CYP3A4の基質)、ワルファリンやジクロフェナク(CYP2C9の基質)、テルミサルタン(OATP1B3の基質)、プラバスタチン(OATP1B1の基質)及びエリスロマイシン(OAT, P-gp及びCYP3A4の基質)の体内動態に及ぼす影響について、血清中UT濃度を加味した連関解析を行う。血清中薬物濃度はHPLCを用いて測定する。また、血清中各種UT濃度については、LC/MSを用いて網羅的に測定する。得られた結果について、各種UT濃度プロファイルと薬物動態パラメータの連関について比較評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:900000円旅費:300000円その他(論文校閲・論文投稿費):200000円
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