研究課題
前年度の研究成果をもとに、今年度は血管平滑筋細胞(VSMCs)増殖過程におけるextracellular-superoixde dismutase(EC-SOD)発現調節機構を標的とした新規動脈硬化症予防薬の探索を行った。動脈硬化症は内皮細胞の活性化、単球のマクロファージへの分化および泡沫化、VSMCsの異常増殖に特徴付けられる炎症性疾患であるが、EC-SOD発現に及ぼすVSMCsとマクロファージとのクロストーク機構は不明な点が多い。そこで、マクロファージの培養上清を回収し、VSMCsに添加したところ、EC-SOD発現の有意な減少が認められた。以上の成果より、単球からマクロファージへの分化過程において産生・放出されたgrowth factorならびに炎症性サイトカイン等により、VSMCsにおけるEC-SOD発現減少を来たし、それが動脈硬化症の増悪へ繋がる可能性が示唆された。一方これまでに他の先行研究において、各種フラボノイドが動脈硬化発症の一序となる単球からマクロファージへの分化過程において、接着分子の発現増大を抑制することを確認している(論文投稿中)。そこで、血清(FCS)誘導性EC-SOD発現減少に及ぼす各種フラボノイドの影響を検討した。各種フラボノイドでVSMCsを前処理したところ、luteolinおよびchrysoeriol処理細胞において、FCS誘導性EC-SOD発現減少の有意な抑制が認められた。また、その作用機序を検討したところ、FCS誘導性のMEK/ERK経路の活性抑制に基づくと推察された。以上の成果より、luteolinおよびchrysoeriolは動脈硬化巣を形成する単球・マクロファージのみならずVSMCsにおいても抗動脈硬化作用を発揮する可能性が示唆された。
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