研究課題/領域番号 |
23790191
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
井上 和幸 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90514589)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 抗うつ薬 / 薬剤応答性 / 遺伝子多型 |
研究概要 |
本研究は、うつ病などの精神疾患治療薬の薬物応答性に関わる遺伝的要因を探索し、得られた知見を臨床に応用することを目的としている。代表的な精神疾患の一つであるうつ病の治療は、第一選択薬としてSSRIやSNRIが用いられ、その服用量は初期には少量より開始し、病状が落ち着くまで上限を超えないよう徐々に増量し、その後、同用量を6か月以上維持して服用する。この維持期の服用量が十分でないと、再燃や再発が起こりやすいことが知られている。維持期の服用量は個々によって異なるが、遺伝的因子の影響について検討した報告はほとんどない。そこで、これまで収集したうつ病患者のうち、抗うつ薬の薬剤応答性が見られた50名において、抗うつ薬の維持期の服用量における遺伝的因子との関連について検討した。対象遺伝子はセロトニントランスポーター(5HTT)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、c-AMP responsive element binding protein 1 (CREB1)とした。維持期の抗うつ薬の服用量は各患者が服用している抗うつ薬を併用の場合も含めてイミプラミン換算量にて算出した。また、併用の睡眠薬や抗不安薬による影響を考慮するため、ベンゾジアゼピン換算量を算出し、併せて比較検討した。その結果、維持期の抗うつ薬の服用量は、5HTTLPRの遺伝子多型の一つである5HTTLPRにおいて、SS型とSL, LL型との間に有意に差が認められた。5HTTLPRは睡眠薬や抗不安薬の服用量に関連が見られなかったことから、維持期の抗うつ薬の服用量を設定する上で、重要な因子であることが示唆された。今後は、症例を増やしつつ、薬剤応答性や副作用発症に関わる遺伝的要因について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では症例数において当初の予定通り、順調に収集している。また、収集済み検体については、5HTT, BDNF, CREB1の遺伝子多型解析は終了している。また、PCLO, NATの遺伝子多型についても解析系の構築は終了している。今後は、症例数を増やしながら、構築したPCLO, NATの遺伝子多型解析、また診療録などから、薬剤の中止や副作用の有無の情報を収集し、薬剤応答性や副作用発症に関わる遺伝的要因について検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、うつ病患者50名の症例収集、および5HTT, BDNF, CREB1の遺伝子多型解析、患者の維持期の服用量における各遺伝的要因の影響について検討を行った。本年度も昨年に引き続き、症例数を増やすとともに、PCLOやNATなどのその他の遺伝子多型についても解析を行う。また、維持期の服用量における遺伝的要因の影響について引き続き検討を行うとともに、患者における服用薬剤歴や副作用歴を診療録から収集し、薬剤応答や副作用発症に関わる遺伝的要因の影響についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度と同様に患者試料からのゲノムDNA抽出試薬、遺伝子解析のためのPCR用試薬、プライマー合成、シークエンス用試薬、制限酵素、アガロースゲル、その他、チップやチューブなどの消耗品が必要である。また、学会発表旅費、論文投稿費用等にも使用する予定である。
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