研究課題
本年度は、既に確立しているiPS細胞の肝分化誘導法に対し、平成23年度に行った化学物質による誘導法の改良を加え、遺伝子導入による肝分化誘導法の更なる改良を行った。遺伝子導入による肝分化誘導法の改良は、iPS細胞の肝分化誘導過程中にHNF6発現アデノウイルス(AdHNF6)を用いて検討を行った。肝分化誘導過程(25日間)のうち、①15日→18日、②19日→22日、③22日→25日、④19日→25日について感染時期を検討した結果、④の条件において、CYP3A4 mRNA発現量は、約1400倍の上昇が認められ、ヒト成人肝細胞におけるCYP3A4発現量の約1/10程度に達した。さらに、HNF6遺伝子導入前には認められなかったテストステロンの6β-水酸化活性を有すことも確認された。他のCYP分子種についてもmRNA発現量の測定を行ったところ、CYP1A2及びCYP3A7においてmRNA発現量の上昇が確認された。次に、c/EBPα等の他の肝特異的転写因子についても検討を行ったが、HNF6遺伝子導入ほどの効果が認められる遺伝子は現時点までに同定されていない。次に、胎児肝細胞と比較して成人肝細胞において発現量が高いことが報告されているマイクロRNA(miRNA)について検討を行った。10種類のmiRNAを対象とし、肝分化誘導過程中に導入した結果、let-7cにおいて、CYP3A4 mRNA発現量の約30倍の上昇が認められた。また、miR-99a、miR-125b、miR-192についてもCYP3A4 mRNA発現量の上昇が確認された。本年度は、遺伝子導入による肝分化誘導法の改良に成功し、得られた肝分化iPS細胞はCYP3A4の酵素活性を有するレベルに達した。さらに、miRNAによる新たな分化誘導法の検討においても良好な結果が得られていることから、十分な成果が得られたと考えられる。
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Drug Metab. Pharmacokinet
巻: 28
DOI;10.2133/dmpk.DMPK-12-RG-132
Drug Metabolism and Pharmacokinetics
巻: 27 ページ: 398-404
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