研究課題/領域番号 |
23790196
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
片山 和浩 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (40406963)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | P-糖タンパク質 / PP5 / PPP2R3C / FBXO15 / ユビキチン化 |
研究概要 |
【(1)PP5、PP2AによるP-糖タンパク質/BCRPの発現・機能制御】 PP5、PP2A、およびその制御サブユニットPPP2R3CによるP-糖タンパク質の発現制御について検討した。内因性P-糖タンパク質を発現するHCT-15、SW620-14、OVCAR-8、HEK293のいずれの細胞株でも、PP5およびPPP2R3CをsiRNAでノックダウンすると細胞膜上のP-糖タンパク質の発現が増加した。PP2Aのノックダウンは、P-糖タンパク質の発現に影響を与えなかった。これらの結果から、PP5はP-糖タンパク質の安定性を低下させるものと考えられる。抗がん剤耐性の一つとしてP-糖タンパク質の発現が鍵になっているので、PP5がP-糖タンパク質の発現を低下させることは、抗がん剤耐性の克服に向けて重要な証拠になる。【(2)新規P-糖タンパク質C末端領域結合タンパク質の機能解析】 F-boxタンパク質として機能分類されているFBXO15に注目して研究を遂行し、以下の結果を得た。(1)FBXO15はP-糖タンパク質と結合した、(2)FBXO15はP-糖タンパク質と共局在した、(3)FBXO15はP-糖タンパク質をユビキチン化した、(4)FBXO15のノックダウンにより細胞膜上のP-糖タンパク質の発現が増加した、(5)FBXO15のノックダウンによりビンクリスチンに対する耐性が増大した。FBXO15はSCF複合体において基質認識を担っており、P-糖タンパク質のユビキチン化、プロテアソームによる分解を制御することが明らかになった。P-糖タンパク質の発現制御に関する報告は乏しく、分解機構については全く明らかになっていないことから、本研究は細胞生物学の面で非常に価値がある。また、FBXO15はドメイン解析からF-boxタンパク質に分類されていたが、その基質は見つかっておらず、P-糖タンパク質はFBXO15の最初の基質である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PP5、PPP2R3CによるP-糖タンパク質の制御では、P-糖タンパク質の脱リン酸化検討の系を現在構築中である。平成23年度中にこの脱リン酸化検討の系を構築することを目指していたが、今のところ完成していない。しかし、他のデータが得られていることから、総合的には比較的順調に進捗しているものと考えられる。 FBXO15によるP-糖タンパク質の分解制御は、当初の予定を上回る進捗状況である。論文作成に必要なデータはほぼ揃っている状況である。 新規P-糖タンパク質中間領域結合タンパク質の同定は、上記2つの研究を優先したことから、平成23年度中に開始することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PP5、PPP2R3CによるP-糖タンパク質の制御では、P-糖タンパク質のリン酸化状態の変化を確認し、またそのリン酸化部位を同定していく。さらに、そのリン酸化がP-糖タンパク質の発現や活性に与える影響について、抗がん剤に対する耐性度などを指標として調べ、研究成果をまとめていく。また、学会等で研究成果報告をしていく。 FBXO15によるP-糖タンパク質の分解制御は、現在、論文投稿の準備をしている。本研究成果は、平成24年度中に掲載されることを目指す。また、国内外の学会で成果報告をしていく。 新規P-糖タンパク質中間領域結合タンパク質の同定は、上記2研究の進捗を見ながら開始時期を見極めるが、可能なかぎり早い時期に開始できるように目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬や消耗品の購入など、研究に関する消耗に主に研究費を使用する。また、学会での成果報告およびその旅費、論文投稿などの諸経費としても使用する。
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