研究課題
ヒト間葉系幹細胞における心筋への分化誘導過程においてレニンアンギオテンシン系が関与していることを解明した。in vitroでヒト 間葉系幹細胞と胎児マウス培養心筋細胞との共培養を行い、心筋細胞を誘導することに成功した。その過程においてレ ニンアンギオ テンシン系に関連する薬剤がどのように影響するか確認した。予備実験においてアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の前投与により ヒト間葉系幹細胞の心筋分化誘導効率が2~5倍程度増加する事を確認した。ARBと同系統の薬剤であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬 の前投与でも、ARBより高濃度で投与することで同様の心筋分化誘導効率改 善作用があることが判明した。上記実験について再現性を 見るために複数回にわたり繰り返し施行した。in vivoではARBを添加して培養したヒト骨髄間葉系幹細胞をヌードラット心筋梗塞モデ ルに移植しその効果を確認した。拒絶反応の少ないNude Ratで慢性心筋梗塞モデルを作製し、ARB非処理ヒト骨髄間様系幹細胞と、ARB 処理ヒト骨髄間葉系幹細胞群に分け、心筋梗塞作製2週間後に開胸し心筋梗塞巣へ細胞を移植した。移植後2週間及び4週間でARB処理ヒ ト骨髄間葉系幹細胞群にて心機能改善効果を確認にした。さらに得られた心筋組織から心筋梗塞部位・梗塞周囲・正常領域の免疫組織 学的検討を行ったところ、ARB処理ヒト骨髄間葉系幹細胞移植群の心筋梗塞周囲での移植細胞の生着を確認し、同群で有意な梗塞巣の 縮小を認めた。またさらなる組織学的検討によりこの移植後心機能改善には血管新生機構が関与していることが確認された。上記より ヒト間葉系幹細胞の心筋分化誘導過程においてレニンアンギオテンシン系が大きく関与していることをつきとめた。
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