研究課題/領域番号 |
23790201
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
沖田 直之 東京理科大学, 薬学部, 助教 (60453841)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Parp1 / Nutlin3a / Caylin2 / 虚血再灌流障害 / p53 / プロテアソーム |
研究概要 |
Poly(ADP-ribose) polymerase1 (Parp1)は、タンパク質翻訳後修飾であるポリADPリボシル化を触媒する核内タンパク質であり、虚血再灌流障害の誘導において重要な役割を果たしている。申請者は、癌抑制遺伝子p53のタンパクレベル制御に重要なMdm2ユビキチンリガーゼの阻害剤Nutlin-3a(以下Nutlin)が、p53及びプロテアソーム依存的なParp1分解を誘導することを見出した。平成23年度は細胞系を用いたMdm2阻害剤誘導性Parp1分解の基本メカニズムの解明を目指し、研究を行った。具体的には、市販されているNutlin3aのアナログ(Nutlin3b、Caylin2)及びその他のMdm2阻害剤(NSC66811、trans-4-Iodo,4'-boranyl-chalcone、RITA)のマウス線維芽細胞株である3T3-L1細胞におけるParp1分解の誘導能を評価した。その結果、Caylin2のみNutlin3aと同様にParp1分解を誘導できることが判明した。その一方で、Nutlin3b、NSC66811、trans-4-Iodo,4'-boranyl-chalconeに関してはParp1の分解誘導能はみとめられなかった。 本研究結果は、p53を誘導できるようなcis-imidazoline骨格を有するNutlin3aアナログがParp1分解を誘導できることを意味し、今後の化合物構造展開をするにあたり非常に重要な知見となった。早速本件に関して、学内の化学系研究者と構造展開に関する共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点では、Nutlin-3aしかParp1分解を誘導できる化合物を同定できていなかった。しかし、最近Nutlin-3aの誘導体であるCaylin-2も同等の活性があることが判明し、学術論文に発表した(BBRC 2012)。また当該メカニズムを利用した虚血再灌流障害防御剤の国際特許も本出願(PCT/JP2012/052565)した。
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今後の研究の推進方策 |
Nutlin3aやCaylin2といった、cis-imidazoline化合物の処理によって作動するPARP1分解メカニズムについての詳細な解析1)を行うと共に、実際に虚血再灌流障害の防御剤への応用の予備実験2)を行う。1)に関しては、cis-imidazoline骨格以外のPARP1分解を誘導できる化合物の探索を行う。2)に関しては、まずは通常のマウスを用いて、cis-imidazoline化合物の静注あるいは腹腔投与時にどの臓器おいて、PARP1分解が誘導されるかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の請求額約100万円に関して、本研究計画にかかる費用の主たるものは、動物維持費及び投与するcis-imidazoline化合物となる。その他、cis-imidazoline骨格以外のParp1分解を誘導できる母骨格の探索のために、各種化合物の購入費用にも使用する。
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