研究課題/領域番号 |
23790203
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
服部 喜之 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (90350222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 葉酸受容体 / リポソーム / マクロファージ / 抗がん薬 / がん治療 |
研究概要 |
腫瘍の成長を促進させる腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage, TAM)は、葉酸受容体βを発現していることから、葉酸修飾リポソーム製剤はTAMに対するDDS製剤になりうることが考えられる。しかしながら、腫瘍の種類の違いにより固形がん中のTAMの存在量が異なる可能性がある。そこで、様々な腫瘍細胞を用いて担がんマウスを作製後、固形がん中のTAMで発現している葉酸受容体β mRNAの発現を調べた。ヒト腫瘍では、前立腺がんPC-3細胞、甲状腺髄様がんTT細胞、扁平上皮がんKB細胞、肝がんHep G2細胞、Huh 7細胞をヌードマウス皮下に移植した担がんマウス、マウス腫瘍では、肺がんM109細胞、LLC細胞、大腸がんColon 26細胞、メラノーマB16細胞、肉腫S180細胞、神経芽細胞腫Neuro2a細胞を皮下に移植した担がんマウスを作製し、各固形がんにおける葉酸受容体β mRNAの発現をRT-PCRにより測定した。固形がんでの葉酸受容体β mRNAの発現は、ほとんどの腫瘍で同程度検出出来た。また、葉酸受容体β mRNAの発現は、培養がん細胞で検出出来なかったため、TAMなどの腫瘍間質細胞由来であると考えられた。 また、TAM標的葉酸修飾リポソーム製剤の調製においては、フォスファチジルコリンとコレステロールに葉酸修飾PEG脂質を添加した組成を用いて行った。リポソーム製剤にマクロファージ阻害薬であるクロドロネートを封入後、これまでに報告されている論文を参考に有機溶媒を用いてリポソーム脂質を除去し、リポソーム内に封入されたクロドロネート量を紫外吸光光度法で測定したが、脂質が完全に除去出来ず、クロドロネート量を定量することが出来ないことが判った。そのため、リポソーム内に封入されたクロドロネートの定量をHPLCを用いて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉酸受容体β mRNAの発現は、ほとんどの固形がんにおいて観察されたことから、葉酸修飾リポソーム製剤は腫瘍の種類に関わらず有効である可能性が推察された。また、TAM標的葉酸修飾リポソーム製剤の調製においては、これまでに報告されている論文を参考に行ったが、薬物の定量方法に問題があることが判明した。しかしながら、リポソーム内に封入されたクロドロネートならびに、クロドロネートよりも高い活性を示すマクロファージ阻害剤であるゾレドロネートの定量が逆相カラムを用いたHPLCにより可能であることを見出しており、現在、クロドロネートとゾレドロネートを用いた各リポソーム製剤の薬物封入率をHPLCを用いて検討を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、クロドロネートあるいはゾレドロネートをリポソーム内に封入し、ゲルろ過後のリポソームに封入された薬物量をHPLCを用いて算出する。そして、薬物封入葉酸修飾リポソーム製剤を担がんマウスに投与し、固形がんに存在するTAMの減少をF4/80抗体を用いて免疫染色により確認する。また、葉酸修飾リポソーム製剤の有効性を確認するために、葉酸未修飾リポソーム製剤においても同様に評価を行う。 葉酸修飾リポソーム製剤の有効性が確認できれば、平成25年度において、薬物封入葉酸修飾リポソーム製剤を担がんマウスに投与し、固形がんの腫瘍体積を算出することにより抗腫瘍効果を評価する。さらに、マクロファージ阻害により腫瘍内の新生血管の形成が阻害されているかどうか、血管のマーカーであるCD31抗体を用いて免疫染色により血管密度を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬物封入リポソーム製剤の作製のために、マクロファージ阻害剤であるクロドロネートとゾレドロネートを、また、リポソームの作製のための脂質(フォスファチジルコリン、コレステロール、PEG脂質)を購入する。さらに、担がんマウスを作製するために、がん培養細胞に必要な培養器具(ピペット・培養皿)・細胞培養培地など一式と、実験動物であるマウスの購入に研究費を使用する。また、腫瘍内のマクロファージを検出するために、免疫染色に用いるF4/80の抗体も購入する。
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