研究課題/領域番号 |
23790203
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
服部 喜之 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (90350222)
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キーワード | 葉酸受容体 / リポソーム / マクロファージ / 抗がん剤 / がん治療 / ゾレドロン酸 |
研究概要 |
昨年度、葉酸受容体βの発現が様々な担がんマウスの固形がんにおいて強く検出され、その発現が腫瘍細胞ではなく腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage, TAM)由来である可能性を見出した。今年度は、葉酸の腫瘍集積性とマクロファージ阻害剤封入葉酸修飾リポソーム製剤の調製ならびに培養細胞を用いた細胞毒性を評価した。 葉酸受容体を発現している扁平上皮がんKB細胞、葉酸受容体が発現していない大腸がんColon 26細胞と前立腺がんPC-3細胞をそれぞれマウス皮下に移植した担がんマウスに蛍光標識した葉酸を投与し、固形がんにおける集積性をin vivo imaging装置により調べた。その結果、いずれの固形がんにおいても葉酸の集積が観察され、固形がんに含まれるTAMを介して葉酸が取り込まれたものと考えられた。 また、マクロファージ阻害剤であるクロドロン酸を封入した葉酸修飾リポソーム製剤の調製は、フォスファチジルコリンとコレステロールに葉酸修飾PEG脂質を添加した組成を用いて調製した。調製したクロドロン酸封入リポソーム製剤に封入されたクロドロン酸の量をHPLCを用いて定量を試みたが、脂質とクロドロン酸のピークが分離せず、クロドロン酸の量を正確に定量することが出来なかった。そこで、同じマクロファージ阻害剤であるゾレドロン酸を用いて同様に葉酸修飾リポソームの作製を試みたところ、HPLCによりリポソームに封入されたゾレドロン酸の量を定量することに成功した。また、KB細胞とColon 26細胞にゾレドロン酸封入葉酸修飾リポソーム製剤を添加したところ、葉酸受容体を発現しているKB細胞に対してのみ高い細胞毒性を示したことより、葉酸受容体を介したゾレドロン酸封入葉酸修飾リポソーム製剤の取り込みを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉酸受容体を発現していないがん細胞を用いて作製した担がんマウスの固形がんにおいても、葉酸受容体βの発現が検出され、静脈内投与された蛍光標識葉酸が固形がんに集積したことから、葉酸が腫瘍間質細胞のTAMに対するリガンドとしての有効であることが確認できた。また、TAM標識リポソーム製剤の調製においては、マクロファージ阻害剤のクロドロン酸よりもマクロファージに対して高い細胞毒性を示すゾレドロン酸を封入した葉酸修飾リポソーム製剤を調製することができ、リポソームに封入されたゾレドロン酸の定量も成功している。さらに、調製したゾレドロン酸封入葉酸修飾リポソーム製剤が葉酸受容体を介して取り込まれることを確認しており、順調に実験計画が進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
葉酸受容体を発現しているKB細胞、葉酸受容体が発現していないColon 26細胞をそれぞれマウス皮下に移植した担がんマウスに、ゾレドロン酸封入葉酸修飾リポソーム製剤を投与し、抗腫瘍効果を調べる。さらに、ゾレドロン酸封入葉酸修飾リポソーム製剤投与後に腫瘍の凍結切片を作製し、マクロファージに対するF4/80抗体を用いてゾレドロン酸によるマクロファージの減少を、血管内皮細胞に対するCD31抗体を用いてTAMの減少によ血管密度の減少を免疫染色により調べる。葉酸受容体が発現していないがん細胞においてもTAMを標的とすることで、TAMによる新生血管作用を阻害し高い抗腫瘍効果が得られるか評価する。さらに、ゾレドロン酸封入葉酸修飾リポソーム製剤の抗腫瘍効果をゾレドロン酸を封入した葉酸修飾していないリポソーム製剤の抗腫瘍効果と比較することにより、葉酸修飾により誘導された抗腫瘍活性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬物封入リポソーム製剤の作製のために、マクロファージ阻害剤であるゾレドロン酸を、また、リポソームの作製のための脂質(フォスファチジルコリン、コレステロール、PEG脂質)を購入する。さらに、担がんマウスを作製するためのがん培養細胞に必要な培養器具(ピペット・培養皿)・細胞培養培地など一式と、実験動物であるマウスの購入に研究費を使用する。また、腫瘍内のマクロファージを検出するために、免疫染色に用いるF4/80抗体やCD31抗体も購入する。
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