研究課題/領域番号 |
23790207
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
加藤 美紀 名城大学, 薬学部, 准教授 (70345594)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脳 / グルクロン酸抱合 / UGT1A / mRNA / タンパク質 |
研究概要 |
現代社会が抱える深刻な心および脳の問題を解決し生活の質をあげるためにも、脳で作用する薬物の重要性は日増しに高まっている。薬物代謝は薬効発現ならびに副作用発現に影響を及ぼす。脳内で薬理作用を発現する薬物の代謝にUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)は深く関わっている。しかし、脳内におけるUGTの発現についての詳細な検討は皆無である。そこで、ラットを用いて脳内UGTの発現を明らかにすることを目的とした。本年度はラットUgt1aサブファミリーに属するUgt1a1、Ugt1a2、Ugt1a3、Ugt1a5、Ugt1a6、Ugt1a7、Ugt1a8のmRNA発現をリアルタイムPCRにて測定した。ラット脳を摘出し、定法に従い9部位(小脳、前頭皮質、頭頂皮質、梨状皮質、海馬、延髄、嗅球、線条体、視床)に分割し、各部位におけるUgt分子種のmRNA発現量を定量した。その結果、各Ugt分子種の発現には部位差が認められた。多くの分子種が嗅球での発現が高いことを明らかにした。また、SDS-PAGE/Western blot分析によるタンパク質定量については、複数の分子種を検出する抗体が多く、単一分子種でのタンパク質定量ができなかった。しかし、Ugt1a全般に反応する抗体を用いた場合、mRNA同様、嗅球で高い発現が認められた。従って、ラット脳内ではUgt1aがタンパク質レベルで発現していることを明らかにし、タンパク質レベルでも発現に部位差が認められた。Ugt2bサブファミリーに関しても、mRNAレベルでの検討を行ったが、発現量が低かったため、Ugt1aサブファミリーを中心として検討した。また、本年度はUgt1aの基質であるアセトアミノフェンやウンベリフェロンのグルクロン酸抱合体の検出系を確立した。この測定系を用いて、次年度、酵素活性の測定を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施した研究は、mRNAおよびタンパク質レベルでの脳内Ugt分子種発現の領域特異性解明を中心に計画した計画書に従っている。Ugt1aサブファミリーに焦点を絞ったが、これはUgt2bサブファミリーのmRNA発現がUgt1aサブファミリーよりも顕著に低かったためである。本年度、mRNAおよびタンパク質レベルでの検討を終了した。次年度に検討するUgtの酵素活性であるが、本年度、アセトアミノフェンやウンベリフェロンなどの代表的な基質のグルクロン酸抱合体を定量できる測定系を確立したため、速やかに酵素活性を測定することができ、速度論的解析に結びつけることが可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はUgtの機能である酵素活性について解明を試み、速度論的解析を行う予定である。特に、本年度はmRNaの発現量の結果から、Ugt1aサブファミリーを中心とした検討を行ったため、酵素活性についてもUgt1aサブファミリーに属する分子種で抱合されると考えられる基質(アセトアミノフェン、ウンベリフェロンなど)を用いて検討を行う予定であるが、時間が許せば他にもUgt1aサブファミリーの基質になるような薬物を基質として測定する。さらに、薬物相互作用の一因である薬物代謝酵素誘導について、脳内での酵素誘導の可能性を明らかにすることを目的として、Ugtの誘導薬をラットに投与し、脳内Ugt の発現変動を明らかにする。Ugtの誘導薬としてはこれまでに肝でUgt1aを誘導すると報告されている誘導薬について検討を行う予定である。 加えて、平成24年度は脳内におけるUgtのmRNA、タンパク質、酵素活性レベルでの部位差に関する研究結果をまとめ、論文投稿準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度予算は、消耗品として第一に脳内酵素活性を測定するために、実験動物と酵素活性測定用試薬に使用する。第二にUgtの誘導作用の検討のためにも、実験動物、mRNA測定用試薬、タンパク質定量用試薬、酵素活性測定用試薬を購入予定である。
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