研究課題
腎癌との強い関連性が示唆されている癌抑制遺伝子(VHL)については細胞内酸素濃度を反映することが示唆されている。前年度、塩化コバルト添加によって擬似的に低酸素状態にした786-o細胞における遺伝子発現量変動パターンはVHL遺伝子の発現が報告されているHCT-15細胞と比較して大きく異なることを報告した。本年度は同様の検討をVHL遺伝子を欠損した腎癌由来RCC4(-)細胞とVHL遺伝子を導入した細胞株(RCC4(+)細胞)を用いて行った。塩化コバルト(200μM)で処理ところ、8時間後および24時間後には解糖系酵素である6-phosphofructokinase (PFK)の分子種などでVHL発現の影響が認められた。同タンパク質の発現変動は低酸素状態における二次的な反応であると考えられ、VHL非依存的な因子の探索を引き続き行う予定である。一方で、低酸素条件下で発現が上昇すると考えられるGalectin-1は、塩化コバルト添加によってVHL(+)細胞では発現が上昇するものの、VHL(-)細胞では発現が低下する傾向にあるなど、物理的低酸素濃度条件下での結果と異なる可能性があり、今後原因の詳細を解析する予定である。
3: やや遅れている
ヒト腎癌由来細胞に加えて、ヒト腎癌以外の細胞においても検討を進められている点では順調といえる。しかしながら、遺伝子発現量の検討は順調に行えているが、タンパク質発現量を行う際に標的タンパク質を検出する抗体の選定と検出条件の模索に時間を要している。また、低栄養条件下での検討が遅れている。
引き続き、ヒト腎癌由来細胞およびヒト腎癌以外の細胞において検討を行う。また、タンパク質検出用の抗体の選定と検出条件の模索をさらに行う。低酸素状態の作製には塩化コバルト添加に加えて、窒素を用いるなど物理的低酸素状態による検討を行う予定である。
次年度研究費は、培養細胞における創薬ターゲットタンパク質を検出するためのmRNA定量およびタンパク質定量系確立に必要となる試薬ならびに遺伝子・タンパク質の抽出や精製にかかる試薬などの消耗品費、また、細胞培養を行うための器具や培養液等の試薬代に当てる予定である。さらに、研究費の一部は、本研究の成果を学術論文・学会発表等の手段によって社会へ発信するための旅費等として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (10件)
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