近年、ゲノム塩基配列以外にも個人差として遺伝的に伝達されるエピジェネティクスが注目されている。すなわち、癌細胞の抗癌剤感受性に相違を認める要因の一つとして、エピジェネティック変異の影響も十分に考えられる。そこで、エピジェネティック変異情報に基づいた癌化学療法の個別化を目指して、抗癌剤感受性に影響を及ぼす可能性が示唆された遺伝子について、エピジェネティック変異(メチル化異常)を解析した。 実験には、37種のヒト由来癌細胞株(肺癌、乳癌、子宮頸癌、肝臓癌、腎臓癌、大腸癌及び食道癌)を使用した。癌細胞由来のゲノムDNAは、バイサルファイト変換を実施したのち、DNAシーケンサーにて塩基配列を解析した。また、塩基配列データ(メチル化異常)と抗癌剤感受性との関連性について検討した。 その結果、各遺伝子のプロモータ領域のメチル化について解析したが、抗癌剤感受性と関連性が示唆されるメチル化異常は観察されなかった。メチル化異常の検索範囲を広げて、抗癌剤感受性との関連性を検討する必要があると思われる。また、検討遺伝子についても増加させる必要性が示された。
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