研究課題
近年,生活習慣病の発症・進展に,酸化ストレスの密接な関与が明らかになってきたが,抗酸化剤の適応を有する薬剤は殆どない上,新規薬剤の開発及び上乗せ処方は医療経済的な負担が大きい.本研究では,既存の生活習慣病治療薬の中から酸化ストレス軽減効果を兼ね備えた薬剤の活用(育薬),並びに優れたラジカル消去効果を有する機能性食品の未病医療への適用(育食)による多面的抗酸化療法を確立し,これに多彩なバイオマーカーを駆使した酸化ストレスの網羅的評価方法の組み合わせにより適正化を図る生活習慣病の新たな治療戦略の提案を最終目的とする.研究初年度として生活習慣病治療・予防における薬物及び機能性食品のin vitroにおける抗酸化作用のスクリーニングを行った.生活習慣病に対する治療薬として使用されている各種降圧薬,経口血糖降下薬,脂質代謝改善薬及び予防が期待され,科学的根拠を持つ各種機能性食品について,各種酸化ストレスマーカーにより既存の効果に加えた抗酸化作用について検討した結果,脂質吸収抑制作用を有するキトサンにおいて,顕著な抗酸化作用が観察された.加えて,酸化ストレス亢進により血管内皮が最初に傷害を受ける部位であるため,血管内皮細胞を用いた培養細胞系を使用し,各種ラジカルに対する酸化ストレス抑制効果や細胞保護効果についても検討した結果,酸化ストレス抑制に伴う細胞保護効果が観察された.以上の知見より,今後,機能性食品であるキトサンの多面的抗酸化療法への応用が期待される.
2: おおむね順調に進展している
生活習慣病治療・予防における薬物及び機能性食品のin vitroにおける抗酸化作用をスクリーニングした結果,各種生活習慣病治療薬において一部薬物においてある程度の抗酸化作用を有する薬物を見つけることができた.一方,各種機能性食品の中のキトサンにおいて,既存の効果に加えた顕著な抗酸化作用を確認することができた.以上の結果から,これら薬物及び機能性食品に対して,実際にin vivoへの応用について検討を継続できるため,初年度としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
初年度に得られた結果はあくまでもin vitroのみの結果であり,今後,病態モデル動物を利用した薬物及び機能性食品投与による生化学値および抗酸化作用との関連性を検討することにより,in vitroで得られた結果の妥当性をin vivoにおいて評価する必要がる.
In vitro スクリーニングにより抗酸化作用を有する可能性が認められた薬物及び機能性食品に対して,病態モデル動物を用いたin vivoでの検討を行う.病態モデルとして,糖尿病,肥満(高脂血症),高血圧,慢性腎不全を設定し,評価項目として各種酸化ストレスマーカーを用いた抗酸化作用,細胞内シグナル伝達物質および生化学値の変動について検討を行う.また,免疫染色法などの手法を用いて組織を評価する.
すべて 2011 その他
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