研究課題
神経発生過程では複数の因子がalternative splicingを受けており、このようなRNA修飾は神経分化に深く関わる事が示唆されているが、その分子メカニズムは不明な点が多い。これまでに神経幹細胞に発現するSplicing調節因子PTBのコンディショナルKOマウスを作製し、PTBの欠損が生後での重篤な水頭症を引き起こすことを見出した。未分化細胞(Radial glia)が脳室帯表層にて形成する接着構造の維持にPTBは働いており、神経幹細胞集団の細胞間接着および細胞極性を制御して未分化維持に働くことが明らかとなった。本研究ではこのようなalternative splicingにより制御されるナンセンス変異依存RNA分解機構(NMD)に注目し、NMDが神経分化にどのような影響を及ぼしているのか、NMD依存的に抑制される標的RNAの解明を目的に、NMD構成因子UPF1コンディショナルKOマウスを作製した。Nestin-Creマウスとの交配による神経特異的UPF1欠損は、脳の低形成を引き起こしin vitroにおいても神経幹細胞に由来するSphere形成能の著しい低下が認められた。また早期に大脳皮質特異的にCreを発現するEmx1-Creマウスとの交配による神経特異的UPF1欠損脳では胎生期17日での大脳皮質領域がほぼ消失しておりUPF1が胎生期初期の神経分化に働く事が明らかとなった。現在、UPF1欠損マウスより得られる脳サンプルを用いてマイクロアレイ法による標的mRNAの網羅的な探索を行っている。今後これらの研究によりRNA結合蛋白質によるalternative splicing制御と神経分化との相関について新たな知見が得られる事が期待される。
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