研究課題/領域番号 |
23790224
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松崎 伸介 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (60403193)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / カナダ / スモ化 / アルツハイマー病 |
研究概要 |
まず初めにアルツハイマー病モデルマウスとして知られているCRND8マウス(アミロイド前駆体タンパク質の変異株が発言するマウスで、早期からの老人班形成と行動異常が報告されている)をSUMO1トランスジェニックマウスと掛け合わせることで、行動異常および病理像にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果、生後12-15週齢で認められるCRND8マウスの恐怖記憶に対する異常が、CRND8-SUMO1TGマウスにおいて改善されていることが明らかとなった。本結果は、アルツハイマー病の病態形成過程において脳内でのスモ化が重要な役割を果たしていることを示唆している。そこで、本結果を誘導したメカニズムを解明する目的で病理学的な検討を進めたところ、14週齢にて行った免疫組織化学的検討の結果老人班形成がCRND8マウスに比してCRND8-SUMO1 TGマウスでは抑制傾向にあることが見いだされた。また、定量的な検討を行うため老人班の主要構成成分であるアミロイドβタンパク質の含有量をマウス脳を用いて測定したところ、有意差はつかないものの現在の例数においてCRND8-SUMO1 TGマウスではCRND8マウスに比して抑制傾向にあることが明らかとなった。しかしながら、より老人班形成の進む20週齢以降では両者において老人班形成に差を認めないことから、CRND8マウスにおける病態改善の背景には初期の老人班形成(アミロイドベータタンパク質産生)のみならず、他の要因が重要であると考えられる。現在は、研究計画に基づき、アルツハイマー病発症経路において重要であるもう一つの因子タウタンパク質のスモ化と神経機能制御の観点からシナプス機能へのスモ化の関与について検討するため準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
留学先であったTORONTO大学との情報交換並びに研究ツールのやり取りがスムーズに運んだことが最も大きな要因と考えられる。アルツハイマー病研究の第一人者であるDr.HyslopやSUMO化と神経変性疾患についての検討を世界に先駆け行ってきたDr.Fraserら所属するTORONTO大学の研究チームから助言を得られたことも大きな一因である。解剖学観点から神経機能の検討を進めてきた遠山正彌教授らの助言を頂けたことも大きな一因である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点の研究成果により、アルツハイマー病でみられる記憶系の異常に対して脳内でのタンパク質SUMO化が防御的な役割を果たしていることが示唆された。また、その防御機構のメカニズムの一因として、老人班形成(アミロイドβタンパク質産生)の抑制が関与する可能性を見出した。しかしながら、本研究により得られたデータから、老人班形成経路の抑制だけでは行動改善に対して十分な説明ができないと考えられることから、今後の研究においては当初の研究計画の柱の一つである、タウタンパク質のSUMO化についての検討、並びに神経機能へのSUMO化が及ぼす影響を検討することで、アルツハイマー病の病態並びに病態改善の背景に存在するSUMO化の意義を明らかとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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